元殺し屋はヒーローになる14 (ページ33)

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103話２つのワン・フォー・オールページ33

「活真逃げ」

『あんたも』

「！」

震えそうな足で立ち上がってナインを睨みつけた真幌の前に、サッと手を出したのは青子だった

ズタボロの体はもう限界を超えている
“個性”で修復しようにも、ナインがすぐそこまで迫っている

「で、でも」

『…お姉さんって役目、本当に大変だと思う
どんな時でも、自分は前に立って弟を守らなきゃいけない
けど、どんなことがあっても、逃げていい時だってある
それが、今なんだよ…真幌』

傷だらけで、血だらけの顔で振り向き、優しい笑顔で微笑む青子は、真幌にそう言いナインに向き直る

『この子たちに手を出すな…！』

絶対に通さないために、2人を取り囲むように大きな土壁を作り出す
フラつき、後ろに倒れそうになる青子は、土壁にもたれた

ハッハッと短い吐息がその場に響く

「青子姉ちゃん!!!」

『活真…』

「！」

『ヒーローってのはね、たとえ死にかけていても立てないほどの激痛に苛まれていても…守らなくちゃいけないものがあるんだよ』

ズリズリと土壁から崩れるように落ちた青子は、短い息をして自動発火ナイフを取り出し、ジクジクと痛む傷に当てた

ジュッと肉が焼ける音と声にならない叫びを辺りに響かせ、そのナイフを捨て立ち上がる

『たとえ何があろうと、ヒーローは戦うんだ』

土煙の奥から苦しみながらもナインが現れ、こちらに近づいてくる

青子は『ハッ…』と笑い飛ばし、ガクンと顔を下に向けた後またゆっくりと顔をあげる

「青子、逃げて」

『!!?』

震える体で青子の前に立ったのは…真幌だった

青子side

「お、お姉ちゃん？」

私の前に立つのは恐怖を押し殺し震えながら立ち向かう真幌の姿

「いいから逃げて！」

「お姉ちゃん！」

『真幌!!』

立ち上がろうと一歩踏み出した時、焼いて処置したはずの傷が強く痛み出した

「来るな！私の弟に手を出すな！……来るなって!!」

絶対に通さないつもりで広げた真幌の手が踏ん張りたい足が、ナインの異様な不気味さに負けそうになる