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6-2 ページ21

「もぉ!ちょっと目を離すとこうなんだから!」

『ハハハハ…』








顔を覆って嘆くおじさんに蘭が不機嫌な顔をして言うと「蘭さん」と竜円さんが蘭を宥めた








「お父さんを叱らんといてあげてください。お誘いしたんは、私らなんですから」

「そうや。名探偵に“源氏蛍”の事件、推理してもらお思てな」

「“源氏蛍”というたら、メンバーはみんな、“義経記”を持ってはるそうどすなぁ」

「わしも持ってるがな。あれはええ本やで、なあ古本屋」

「ええ…けど、僕はあまり好きやおまへん。“義経記”言うても、実際は弁慶の活躍を描いた“弁慶記”ですから」

「私は好きやで?特に“安宅”の弁慶、最高や」

「“あたか”ってなんですか?」











園子が尋ねると「能の出し物のひとつや」と水尾さんが答えた










「頼朝の追っ手から逃れる途中、義経と家来たちは山伏に変装して、安宅の関所を抜けようとするんやけど」

「変装を義経だけが見破られそうになってな。弁慶はとっさに、金剛杖で義経を叩いたんや」

「え?どうして?」

「関所の番人を欺くためや。まさか家来が主君を杖で打つなんて考えられへんやろ?」

「それで義経一行は無事、関所を通過できたんや。あとで弁慶は涙ながらに義経に謝るが、逆に義経は弁慶の機転を誉める。2人の絆の深さがわかるええ話や」

「うぅ…なんか難しい…姫乃ちゃん、わかった?」

『え?あ、はい』

「受験勉強がてらだと思えばいいだろ」









頭を抱えている佐々木先輩に容赦なくお兄ちゃんが言うと「平野が真面目だ…」と佐々木先輩が嘆いた






ーーーーー
ーーー











「わあ、川が見える!」

『?』










料理を口に含んでいた私は声を出した園子の方を見た。障子を開けて外の景色を見ていたのだ










「鴨川どす」

「桜が綺麗…」

「ほんまやね」

「蘭と姫乃も来てみなよ」

『わあ…』









夜桜でライトアップされている桜を見ていると、等間隔に鴨川でカップルが寄り添って桜を見ていた









「鴨川の河原からカップルで見るのもよろしおすけど、この建物の下を流れてるみそぎ川を挟んで眺める桜は、また格別どす」

「ホント、きれいね…」

「いやぁ〜、きれいっす」

『…………』











背後からおじさんの声が聞こえてきて振り返ってみると、鼻の下を伸ばしたおじさんが、千賀鈴さんの左手を持ち自分の頬に擦り寄せていた

6-3→←6話 桜屋



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作者名:サッカーバカ | 作成日時:2022年4月9日 15時

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