. ページ33
.
「ひかる、青のりがついてる」
ひとつずつ差し出されるたこ焼きを頬張っていたら、少女の柔らかい舌がペロリと光の頬を舐めとった、びっくりして顔を上げると、目つきの悪い三白眼の奥から小さな黒い目が放つ真っすぐな視線が自分を見ていた。
「たこ焼き、美味しい？」
那智黒みたいな瞳をしっかりと濃いまつげが縁取っている……、光の心臓がいきなりギューと収縮して、それからドックンドックンと大きくうねり始めた。
熱に浮かれたように勝手に唇が動く
「じ、ゆ、う、わくせい…」
「自由浮遊惑星ね、ホストとなる親星の軌道から外れて宇宙空間を単独で浮遊している惑星のこと」
「たんどくで、ふゆう、している、わくせい、のこと…」
「そうそう、ひかるはおりこうさん。いい子にはご褒美をあげなきゃね、なんかいいものあるかな〜、私、あんまり何も持ってないから、ええっと‥‥」
小さなバッグを開いて中を探る少女の手元をのぞき込む、携帯と財布と…えんじ色のそれ、生徒手帳？
「あ、龍角散トローチがあった！あぁーんってして」
ドックン、ドックン、ドックン
三角公園の隅っこで
賑やかな町のざわめきが遠くなる…
「ちょーーーー待ったあああああ！」
そこに息を切らせて伊野尾が駆け込んで来た、ふたりの間にずんっと割り入ると光の口を手で覆って少女を睨みつける。
「モゴッ、いのちゃん！」
「光に何すんだよ！」
「あ、お帰り、いのちゃん。ゼイゼイ言ってるじゃん、お水あるよ」
「あぁん、飲みかけなんて…てか、それ光のじゃん。」
少女は慌てる風もなく目を細めてニコニコと伊野尾を見て、それから光を見た。
「夕方からもライブがあるから行くね」
「また会える？」
「んーーーどうだろ、でも、続きの明日があればまた会えるよ。世の中に絶対の0%ってないし、これは起承転結の起なのかもしれないし、ね！エピソード1としたら悪くないかな〜、あたし、始まったら伏線まできっちり回収したいタイプなの」
「えっと‥何言ってんの？コイツ」
「じゃあね、光。今はわかんないけど、また明日！」
ひらひらと手を振ると、肩を揺らして少女は去っていった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Ｑ(プロフ) - しろくまさん» Ｑ(プロフ) - ありがとうございます！まだ「虹の麓に」用に非表示で開けてるスペースもありますし…とりあえず、気になる所や誤字を直したりのメンテナンスに励みます。お婿になっておうちで専業してるって妄想もあるからね！これからもよろしくお願いします (2022年2月7日 9時) (
レス) id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
しろくま(プロフ) - 一旦完結ということですね、おめでとうございます。これからしばらく妄想力がますます必要になってくると思っています。引き続き楽しみに待っています！！ありがとうございました！ (2022年2月6日 14時) (レス) @page45 id: d7e22074ad (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - ちちちさん» ちちちさまの涙をポチャッコのハンカチで拭き拭きしたい…いま、続きの話の資料読み中だけど、多分週末には上げられるのでハッピーエンドをお待ちくださいませ (2021年12月14日 8時) (レス) @page41 id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
ちちち(プロフ) - えっぐえっぐえっ…泣いております。2人の間には長い歴史があり、この先も必ず心にお互いがいる人生…ほんとにこんな2人をずっと見守っていきたい… (2021年12月13日 23時) (レス) id: 3093699708 (このIDを非表示/違反報告)
Ｑ(プロフ) - ちちちさん» Ｑ(プロフ) - ちちちさま。お受け取りいただきありがとうございます。薮くんの笑顔と光くんの泣き顔…そう、光くんは指輪を受け取ってくれたはずです！後日談はまた後ほど(^^) (2021年12月12日 7時) (レス) id: a1a90f72f9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
