ヒロトと灰崎の前世の物語 (ページ7)

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訳が分からずに居ると、一人の女が俺の前まで歩いてきた。

灰崎「来るな！誰だよお前！」

そう言っても女は構わず俺に近づいてくる。

女神「記憶が無いのですね。これですぐに思い出せますよ。」

まるで天使の声のように女はそう言って俺の肩に触れた。

そして俺はすぐに全てを思い出すことになった。過去に居た恋人のこと、過去に起こった悲劇のこと、自分が誰なのかと言うこと。

灰崎「そうだ･･･私･･･」

俺が中々髪を切らなかった理由も、あの夢の正体も、全て分かった。

女神「今日で貴方は14歳。だから迎えに来ました。ルリ女王様。」

気が付くと、私も皆と同じように着物に羽衣を着けていた。髪は灰色から綺麗な白に変わって、背中には天使のような羽が生えていた。

これが本来の私の姿。そもそも私は男ですらなかったんだ。この世界の住人ですらなかったんだ。

女神「帰りましょう。」

女神はそう言って私に手を差し出す。

でも、私は行くことが出来ない。何故なら、あの人は帰ることが出来ないから。

女神「どうしましたか？」

灰崎「私は帰らない。愛しい人を残して自分だけ帰ることなんて絶対に出来ない。」

女神「許されませんよ。」

そんなこと分かってるんだよ。でも、ここで帰ったら、もう二度とあの人に会えなくなる。だから、ここで帰るわけには行かないんだ。
　
灰崎「例え許されなくても私は･･･俺は灰崎凌兵として、あの人が居るこの世界で生きていく。」

女神「貴方の意思は関係ないのです。私達は無理矢理にでも貴方を帰らせなければなりません。」

灰崎「だろうな。だから俺はこうするんだ。」

俺は背中に着いた羽を付け根から思いっきり引っ張った。

女神「な、何を！」

真っ白な羽は赤色に染まっていき、背中に今まで感じたことが無いほどの激痛が走る。それでも俺は続けた。

やがて片方の羽が抜け、大量の血が吹き出した。そして、俺はもう一方の羽も抜いた。

女神「これは･･･」

背中からのあまりの痛みで俺はその場に倒れて気を失った。