22.お愉しみ ページ22
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地上に出ると、眩しいほどの朝日に優しく包まれた
元気いっぱいのゾムさんに手を引かれ、振り回されるようについて行く
部屋を移動していると、台所の方から小さな器を持ったロボロさんが出てきた
「…なんやゾム、躾はおしまいか」
「もうええねん。Aは俺と約束したからな」
そう言って私の顔を覗き込んだゾムさん
異様に上機嫌な彼に困惑したのか、ロボロさんは一瞬黙った後こちらを睨んだ
「俺は納得できへんけどな。もしまた逃げたら…」
「何言ってんねん、Aは俺に"誓った"んや」
裏切りなんてするはずがない
満面の笑みとは裏腹に、彼の言葉からはそんな圧を感じた
同調を求めるゾムさんに、私は黙って首を縦に振る
「…まあええわ、まずは食事や」
ロボロさんは面布を着け直し、静かに台所へ戻って行った
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「ゾムさ、止まっ…」
苦しいと叫んでも、ゾムさんに問答無用で口をこじ開けられる
ロボロさんに助けを求めても、笑顔で新しい品をどんどん提供される
第一陣を制したと思えば、第二第三の料理が運ばれてくる
事の経緯は簡単で、二度と呪いが発動しないようにという過保護すぎる二人なりの考えから現状に至っている
しかし、さすがに辛い
「やめッ…」
「止めて?Aが食事を怠らんように俺らで管理したってんねん。俺らに向けるのは感謝やろ」
聞く耳を完全に捨てた彼らは、苦しむ私を見て楽しんでいた
「それに、満腹で動きを鈍らせとけばAが逃げることもないやろ?」
さらっと言われた言葉に背筋を凍らせたのは言うまでもない
__
「へぇ…ニンゲンがこの世界に入れることなんてあるんや」
「せや。しかもあいつ、昔シャオロンから聞いたニンゲンと同名やってん」
血生臭い小屋の中
横たえる草食動物の死骸を受け取った魔物は、自身の相棒に案外狭い世間話をした
相棒はそれが受け取られたことを確認すると、大した頓着もせずに隠し持っていた煙草を咥える
「聞いた感じ、お前もそいつのこと気に入っとるみたいやな」
「何言ってんねん…」
そこまで他人に執着するのは珍しい、と好奇の目を向ける男
もう一人の男は秒で否定に入るも、案外核心を突かれたのか少し悩んでから目を伏せた
「…まあ、うちの"主人"に見つからんとええな」
「……せやな」
やっぱ気に入っとるやんけ、と茶化す
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へる(プロフ) - るんぱっぱさん» コメントありがとうございます!不定期ですがこれからも応援よろしくお願いします!! (2022年7月27日 20時) (レス) id: 0fe9e0073c (このIDを非表示/違反報告)
るんぱっぱ - めちゃくちゃ好きです!!!更新待ってます!!! (2022年7月27日 18時) (レス) @page21 id: c984097aec (このIDを非表示/違反報告)
へる(プロフ) - きうさん» コメントありがとうございます!応援とても励みになります!! (2022年6月29日 20時) (レス) @page11 id: 0fe9e0073c (このIDを非表示/違反報告)
きう - あ、すごい好きです、はいw めっちゃもう好きすぎて爆発しそううです(?) 更新頑張ってください!!! めっちゃ応援してます!!!! (2022年6月28日 0時) (レス) @page10 id: 9c9fedb973 (このIDを非表示/違反報告)
へる(プロフ) - 宮村さん» コメントありがとうございます!ストーリー気に入ってもらえてとても嬉しいです😊 (2022年6月25日 20時) (レス) id: 0fe9e0073c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:へる | 作成日時:2022年6月24日 0時