まごつきの森【d】

11.交渉 ページ11

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｢A、上着洗濯しといたで｣

｢…ありがとうございます｣


ゾムさんから、きっちりと折り畳まれたそれを受け取る



衣服、食事、寝床……申し訳ないほどお世話になっている


見ず知らずの違う種族をこれほどまでに快く受け入れてくれる魔物はおそらく他にいないだろう





そういえば、とポケットの中を漁る


……無くなっている


昨晩拾った豚のピンバッジは消えていた


確か洗濯したのはゾムさん、本人に聞いてみるのが一番だ



｢……捨ててきたで。あんなん持っとったらAに臭いが移ってまうやろ｣


一瞬、ゾムさんの纏う雰囲気から怒りと憎悪の感情が見えた


これ以上その話に触れるな、とでも言いたげな冷たい口調


…この話題は今すぐに切り上げるべきだと察した



しかし、計画が狂ってしまった


持ち主に届けることを口実に抜け出そうと思っていたのだが…


…無難に"散歩"なんて言えば許されるだろうか


｢…ゾムさん、おでかけしたいです｣



｢……ニンゲンもあんまストレス溜まると良くないって聞くし、少し出歩くくらいなら別に…｣


少し間があったが、一か八かの交渉は案外簡単に成功した


｢俺はこの前排除した侵入者を処分せなあかんから、出るならロボロの狩りについて行くとええよ｣



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あっさりと事は進み、私はロボロさんの狩りに同行することが決まった


都合の良いことに、多少の狩り道具は倒れていた私が身につけていたらしく、先程返してもらえた


…これで私にも狩りができる


上機嫌で支度をしていると、ゾムさんが近づいてきた



｢…俺はアイツみたいにここから出るなとは言わんけど…他の生き物の臭いつけてこられると腹立つから、万一何かあった時は必ず俺の名前を呼んでな｣


ゾムさんはそう言うと、翠色に輝く小さな勾玉を渡してきた



"何があっても助けに行く"


勾玉は、彼の言葉に反応するように怪しく光った

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