家 庭 科 室 の 、 - 2 - 【地縛少年花子くん】

残残残残 ページ28

過去を知って、Aの思いを知ることができた。まだこれからというのに、“あの紙”があるからには別れはすぐ来てしまうものだ。









　
「！」









　
抱きしめている彼女の体はだんだんと薄くなっている。









　
「…もう消えちゃう。」









　
呑気に言わないでよ。俺もAも覚悟はしていた。しかし、こうして目の当たりにすると辛いものは辛いのだ。









　
「い、嫌だ…。まだ行かないで…。」









　
俺は腕を解き、彼女の正面に立って目と目を合わせる。









　
「私はこの学校の“邪魔になってたんだから”、やっと消えるんだよ。よかった。」









　
と、そう言うが、顔には嘘はつけないようで。Aの目からは涙が流れて太陽の光でキラリと輝いている。そして無理に笑っているのがわかる。









　
「まだ一緒にいたい。」


「駄目だよ。」









　
俺は手をぎゅっと握った。









　
「まだ喋りたい。遊びたい。それから、それから…っ！」









　
まだまだしたいことはたくさんあるのに言葉が出てこない。









　
「…ありがとう。」









　
感謝の言葉。この言葉の重さがどれだけ重いのか理解出来た。









　
「っ！…大好きだよ、A。」









　
俺は涙を堪えて、









　
「私も、大好き。柚木あまねくん。」









　
この世を去っていく柚月Aを見送った。









　
「…。」









　
俺の手にはまだ、彼女の手の感触が残っていた。

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