頼むから話を聞いてくれ!!【治崎廻】 (ページ11)

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十一話ページ11

「若、先日の報告書をお持ちいたしました。」

「ああ。」

驚くほど静かな声。
冷たいわけではないにしろ、どこか事務的で無機質な響きがあった。

「敵連合……雄英に侵入、か。」

声をかけられた廻はというと新聞の切りぬきを読みながら、苛ついたように眉をひそめる。

ため息をつきながらそうつぶやくと顔を上げないまま鍵を机においた。

「音本。」

「畏まりました。」

神妙にうなずき、音本さんが出ていく。

……どうしよう。

「クロノ。」

ついさっき音本さんが提出した資料に目を通している廻が突然言う。

クロノ？クロノは今いないが。
まさか、勘違いされているのだろうか。

「おい、そろそろ実験の……」

顔を上げて廻が固まった。
こんな表情するんだなぁ、なんて意味の分からない達観が脳内を過る。

「A？」

おそるおそるといった声で聞かれる。
珍しい。

悪かった、なんて謝られてハッとした。

『多部君が地下の壁壊しちゃった。』

違う。

ここは、
『声かけない私も悪かったから、ごめん。』
って言うところ。

どうして思ったことが言えないの？
この場に一人だったら頭を抱えてうずくまっていたと思う。

分かっているのにどうしてもパニックになって会話ができない……。

会話のドッジボールという奴だろうか。