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「あのっ」
「えっ、何、どうしたの。」
「す、好きです。」
一瞬時間が止まってしまったのかと思った。
好きです。伊藤君の唇からこぼれ落ちた言葉が熱帯夜の暑苦しい空気を震わせる。夏のアスファルトの陽炎の様に揺れる伊藤君の瞳が私を見据える。顔を赤く染めて告白する伊藤君の姿に呼吸を忘れる。
カラオケ屋特有の薄い壁越しに聞こえる、お客さんの歌っている少し調子外れのラブソングの歌詞は今の状況によく似ていて。
「え、好き、えっ」
「Aさんの事が好きです。」
「あの、私も伊藤君の事、好きだよ。」
「えっ、ほん、本当！？」
目を見開かせて驚く伊藤君にそんなに嬉しいのかとこちらが驚いてしまう。喜んでくれる伊藤君が嬉しくて、でも喜ぶのも恥ずかしくて飛び跳ねるほど嬉しい気持ちを隠してわざと素っ気なく呟く。
「嘘、つくわけないじゃん。」
「え、わ、そっか、そっかぁ。」
噛み締めるように言われてしまいつい照れてしまう。きっと今の私の顔はさっき見た伊藤君の顔よりも赤くなっているし熱くなっている。
けれどふと、好きとは言われたし両思いだけど付き合うとは言われてない事に気づく。私だけが付き合ってると思ってるすれ違いだけは避けたい。けれど両思いだからと言って必ず付き合うのかと言われたら分からない。伊藤君はどっちなんだろうと頭の中でぐるぐると思考の波に溺れそうになる。
こういう時は当たって砕けろの精神でいくしかない、と腹を決める。すぅ、と肺いっぱいに空気を取り込みしりすぼみにならないように気を付けながら口を開く。
「あの、両思いだし、良かったらなんですけど、付き合いませんか。」
「あ、よ、よろしく、お願いします。」
断られなかったことにほっと安堵する。今日から伊藤君の恋人という事実に喜びと少しの気恥ずかしさが胸を占める。勇気を出して恋人という免罪符で許して欲しいと思いずっと引っかかっていた事を言う。
「明日その人と会うの、やめて欲しい、かも。」
「それは勿論。」
我儘にも取れるお願いを喜色満面で言い切る伊藤君。つい壁越しにずっと聞こえているラブソングみたいな恋も伊藤君となら出来るかもなと夢想してしまった。
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蜂蜜塗れで爆ぜた檸檬／ito→←マイクチェック、そちらに愛は届いてますか？／ito
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白昼夢(プロフ) - カエデさん» カエデさんお久しぶりです！私の話や言葉遣いがお好きと仰っていただけてとっても嬉しいです☺️カエデさんのリクエストに沿ったお話が書けて、カエデさんに読んでいただいて幸せになっていただけたようで私も幸せです〜🎉 (2023年4月4日 2時) (
レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - リクエストさせていただいたカエデです。引き金に指を掛けて、今 拝見させていただきました…！主さんの作るストーリーや言葉遣いがとても好きな上に自分の好きなシチュエーションでお話を見る事ができてとても幸せです。ありがとうございます！！ (2023年4月3日 3時) (レス) id: 1e00067a9a (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 里佳子さん» コメントありがとうございます🙇♀️お褒めの言葉を頂けてとても嬉しいです、こちらこそ里佳子さんの作品を毎回楽しく読ませていただいています😌遅筆ですがこれからも頑張ります☺️ (2022年4月6日 20時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
里佳子(プロフ) - はじめまして。感想が浅くて申し訳無いのですが、もうめちゃくちゃ好きなお話ばかりです…。白昼夢様の語彙力が素晴らしくて、ドキドキしつつも感動しています！これからも応援させてください😌 (2022年4月6日 5時) (レス) id: 0670838cd9 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - のどかさん» 読んでいただけて嬉しいです！のどかさんにきゅんきゅんしていただけた小説を書けて良かったです☺️だいすきだなんてそんな、勿体無いお言葉をいただけて嬉しいです😌遅筆ですがこれからも頑張ります🙌 (2022年2月28日 21時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白昼夢 | 作成日時：2022年1月16日 21時
