＃３４ ページ35
〜重岡 side〜
それはもう一瞬のことやった。
苦しそう、っていうよりも眠そうな顔の小瀧。
それでも慌ただしく動いて、小瀧に声をかけるお医者さんの姿とか看護師さんの姿を見たら、
ああ、もう小瀧死んじゃうんやなって。
こんな一瞬で終わっちゃうんや。
「……し、げ」
ふふ、って力のない笑みを見せる小瀧。
やっぱりイケメンやなって、なんか改めてそう思った。
「小瀧」
なんて声かけたらええんやろ。
このときを迎える前までに話しとくことは全部話しとこって、そう思ってたから、だいたい話してもうた。
なにより、ほんまに実感がわかへんかった。
「……俺、しげに、会えて……ほんまにうれし、かった」
小瀧の紡ぐひとつひとつの言葉。
「俺の、太陽で、おってくれて……ありがとう」
それを全部大事に大事に心の中に留めておこうって、必死に耳を傾けた。
「しげ、は……ひとりで、抱えこんでまう、から……神ちゃ、にちゃんと、頼るん、やで」
もうこの声を聞くことも、この表情も見れなくなるなら、大事に大事にその一瞬を自分の中に収めた。
「あ、と……しげは、しげのまま、が、いちばん、や」
「っ……こ、たき」
気づいたら涙が頬を伝ってた。
ボロボロと雫が服を濡らしていく。
「お、れ……俺のままでええの？」
「ふふ、あたり、まえ……やろ？」
____大毅の価値なんていつも明るくて笑ってるところくらいなのにね。
自分がおる意味がずっとわからんかった。
自分の殻の中に閉じこもって、ありのままの自分と向き合っては、絶望を感じてた。
「しげは、しげのままで、ええよ」
小瀧の声が温かかった。
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作者名：シャルル | 作成日時：2019年7月14日 21時
