Only Love

＊ ページ31

収録が終わったのは、16時前


まだ、紫穂のお迎えまで時間はある。


紫耀の車へ乗り込み
あてもなく車を走らせる





紫「店とか入る時間もないだろうし、Aんちまで少し遠回りして送るわ」

「うん、ありがとう」

紫「…子供、かわいい？」

「…うん、かわいいよ」

紫「俺も、会ってみたい」

「え？」

紫「会いたい」

「ふふ、廉も言ってたよ。今度連れていこうかな笑」

紫「違うだろ…廉の会いたいと、俺の会いたいは…」

「え？どういう意味？」

紫「…」




紫耀はしばらく黙ったまま
真っ直ぐ前を見て運転してる



…怒ってんのかな








え、なんで？







でも、そんなことより
未婚だってこと、ちゃんと話さなきゃ…







「ねぇ、紫耀」

紫「なに」

「怒んないでよ…あのね、裕也…ぢゃなくて、有野川さんのことなんだけど…」

紫「…」

「あの人はね、子供の父親なんだ…だけど、私の旦那ではない。未婚で産んだの」

紫「…うん。顔忘れてたけど、あとでよく考えたら、あの時病院で見たの、あの人だったわ」

「黙っててごめんね。いろいろあって…今日は、私のために怒ってくれたんだよね…？本当に、ごめんなさい」

紫「…なんで」

「え…？」

紫「あの時…なんで俺から、離れたの」








ちょっとだけ
想定外の質問だった。




なんで未婚で産んだのか
なんで結婚してることにしてるのか

そんなことを聞かれると思ってた…






紫「なんで俺に何も言わなかったの？違うって、この人とは結婚しないって…なんで言ってくんなかったの」

「…」

紫「…」

「言ったら…どうしてた？」

紫「…」

「…困ったでしょ？」

紫「そりゃ…あ、そうなんだ？ってわけにはいかないよ」

「うん…」

紫「だけど…即答はできなかったかもしれないけど…きっと、一緒に育てたと思う」









紫耀は優しいから…

もしかしたらそう言ってくれるんじゃないかって
心のどこかで思ってた





だから、言えなかったんだ…






「…ふふ」

紫「…なんだよ」

「紫耀はほんとに、優しいね…。だから、言えなかったんだよ」

紫「え？」

「紫耀に負担かけたくなかったから」

紫「…」









紫耀はそのまま黙り込み
私もどう切り出せばいいのかわからないまま
しばらく沈黙が続いた







そして赤信号で止まった時

紫耀はこちらに振り向き







助手席の私をじっと見て







紫「A…結婚しよう」









そう、言った…

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