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「意外でした」

戸惑いを含んだ微笑で、目の前の少女が言った。梅田駅の地下にある喫茶店でクリームソーダを飲みながら。赤茶けたソファのボックス席は、百貨店で購入したブランド品の紙袋を置くスペースに困らなくて助かる。

「意外って?」
「だって、歌姫ちゃんから聞く瀬奈さんって、お洒落で可愛くて優しくて、すごくモテる完璧な人だったから。梅田で1時間も迷子になるような、抜けたところもあるんだなって」

大阪出張の帰り、新大阪駅発、東京駅着の新幹線の時間まで余裕があったため、思い立って、梅田まで足を伸ばした。百貨店で関西限定のオータムコレクションをいくつか購入し、中之島のカフェへ徒歩で向かおうとしたところ、道に迷った。

人の流れに沿って地下街を歩けば方向を見失い、地上に出れば複雑に入り組んだ歩道のせいで目の前にあるはずの建物にすら到達できず、こうなったら中之島まで徒歩で向かうのは諦めようと全線路線図を見上げれば「東梅田」「西梅田」「大阪梅田(阪急線)」「大阪梅田(阪神線)」などなど、梅田駅がありすぎて、どの梅田駅に向かえば良いのかわからなくなった。

中之島どころか、新大阪に戻ることすらできないかもしれない。

弱気な考えが脳裏をかすめて途方に暮れていたとき、「もしかして、瀬奈さんですか?」と中学生くらいの少女に呼び止められた。誰か分からず曖昧な微笑を浮かべていると「覚えてませんか? 以前、東京校で挨拶させてもらった、庵歌姫の親戚の……」と説明されて、ようやく記憶の扉が開く。それが今、目の前に座っている、庵ちゃんというわけだ。

「歌姫先輩ってば、私のことそんなふうに話してたの? 全然ちがうよ。完璧とは程遠い人間だから」
「えー。でも、お洒落で可愛くて優しくてっていうのは、歌姫ちゃんの話通りだし。それなのに、ちょっと抜けてるところがモテるんでしょうね」
「ふふふ、そんなこと滅多に言われないから、自己肯定感上がっちゃうな。ありがとう。でもね、抜けてるというか、適当なの」
「仕事はすごく丁寧だって、歌姫ちゃんよく言ってますよ」
「仕事はね。でも、プライベートは大雑把だよ。今回にしても、ちゃんと調べてから歩けばこんなに迷わなかったのにって後悔してる。梅田がダンジョンなんて言われてる理由がわかったよ」
「私にしてみれば、渋谷駅を案内なしで歩けることのほうがすごいです。関西とは比べ物にならないくらい人が多いし、自分が今何階にいるのかわからなくなっちゃって」

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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時

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