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あだから、ナーバスになっている姿を初めてみて、彼女もまだ庇護されるべき少女だったことを思い出した。
あひどく異質だと思った。いくら呪術という特別な力を持って生まれたといっても、未成年に自分や他人の命を背負わせるなんていうことを、強制させていいはずがない。
あだけど、どうすることもできないということも理解していた。
あ世の中にはさまざまな才能があるけれど、呪術は、極小数の人間に与えられる先天的な才能だ。慢性的な人手不足を、教育や職業訓練による人材育成で解消できないのなら、素質ある未成年を現場に投入するしか方法はない。
***
あ数日間、高専は異様な緊張感で満たされていた。天元様の同化失敗による影響、崩壊した建築物の修復、伏黒甚爾の生家である禪院家と五条家の関係悪化への懸念。
あさすがに、私たち高専生にそのあたりの事情が詳しく説明されることはなかった。だけど、五条君が襲撃を受けた地面には、クレーターや影のような血染みができていて、だれもがなんとなく、そこを迂回して校門と校舎とを静かに行き来するような日々が続いた。
「竹之内さん!」
あ廊下を歩いていたとき、後ろから声を掛けられふり返ると、灰原君が、小走りで駆け寄ってきた。
「お疲れさまです!」
「お疲れさま。……護衛任務のフォローで沖縄に行ってたんだってね。大変だったでしょう」
あ触れるか触れまいか迷ったが、思い切って労りの言葉をかけると、灰原君は珍しく浮かない顔をした。
「いや、自分は何のお役にも立てなくて。不甲斐ないです」
「今回の件で役に立たなかった人なんていないよ。皆、自分にできることを精一杯やってた」
「それはそうなんですが」
「それなら現地に行きすらしなかった私はもっと不甲斐ないじゃない?」
「そんな! 竹之内さんは不甲斐なくないです! 甲斐ありまくりです!」
あ慌てすぎておかしな日本語を使う灰原君に思わずふき出すと、彼も、ようやくくつろいだ感じで笑った。
あそのとき、どん、という衝撃音が開け放した窓の外から聞こえてきて、私も灰原君も何事かと窓に近寄った。五条君が、大穴が空いた校舎の壁の前で何やら慌てふためいている。そんな彼に、小言を言っているらしい夏油君の後ろ姿も見えた。
「どうしたんでしょうか」
「さぁ……。五条君が、夏油君に新技を披露しようとして、力加減を間違えたとかじゃない?」
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ひよこまる(プロフ) - えりんぎのバター炒めさん» コメントありがとうございます! 二人旅のシーンは、構想段階からどこかに差し込もうと思っていた場面なので、お褒めいただきすごく嬉しいです。一番書きたいシーンまで上手く辿り着けず焦ることも多いですが、ご期待に添える作品になるよう、頑張ろうと思います(^^) (5月7日 7時) (レス) @page37 id: 8ac964ebff (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎのバター炒め(プロフ) - 心を療養する夏油さんと夢ちゃんの2人旅がすごく素敵です。とても引き込まれる作品で、2人の苦しさが身に染みます……。続き楽しみにしています! (5月7日 0時) (レス) id: 61116f8e5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまる | 作成日時:2024年3月24日 21時