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第二章 解剖生理学は大事 ページ8

_you side_



戴帽式というのは、初めての病院実習に挑む前
教員が学生一人一人にナースキャップを与えて
看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め
またその責任の重さを自覚させるための儀式だ。



私もかつて、この儀式を受けた。




「…っべくしゅん!!」



ちょうどこの時、謎の鼻風邪を患っていた。
風邪薬は飲んだし問題はないだろうと油断しきっていた私は
同級生から心配されつつも白衣に着替えた。




「男子は胸ポケットにスズラン挿してもらうんだっけ?
 いいなぁ、暗いから仕方ないんだけど
 ナースキャップ固定するためにピン刺すじゃん?
 あれ頭に突き刺さっていたいんだよね。」




「わかる、先生も緊張してるのかもしれないけどね。」




なんて雑談をしているうちに戴帽式は始まって
薄暗いホールの中で親族や先輩、先生たちに見守られながら
どんどんナースキャップが学生たちに与えられていく。



案の定、頭に刺さりまくったピンに顔をしかめつつ
中央部分にあるナイチンゲール像の手元で光を放つろうそくから
自分の手元にあるろうそくに火をともして
何度も練習した立ち位置にゆっくりと歩いていく。




「…やばいかもしれない。」





さっきまで大丈夫だったのに
自分の番が終わって気が抜けたから猛烈に鼻がムズムズする。
薬を飲んだから大丈夫太と思っていたのに
今にも大きなくしゃみを放ちそうになる。




「A、あともう少しだから我慢して」





隣に立つ同級生から励まされながら
大きく深呼吸をしたり、頭の中でナイチンゲール誓詞を何度も暗唱して
なんとか気を紛らわそうと必死になっていた。




「…っくし、」




でも我慢ならなくて、できるだけ小さくくしゃみを放った。
そのおかげでなんとか目立つことはなかったけれど
私の手元で明かりを灯していた炎はあっけなく消火されていた。




「やべ、」




「Aこっち」




小声で声を掛けてくれた同級生が
自分の持つろうそくを私の方に少し傾けてくれて
先生にバレないよう火を分けてもらうと
何とか戴帽式を最後まで乗り切ることができた。



















「うげ、」




でも大学のブログに載せられていた写真を確認すると
明らかに一人だけ、明かりが灯っていないろうそくをもつ学生がいて





「…幸先悪すぎでしょ。」






今思えば、くしゃみでろうそくの火を消し去ったあの日から
私の看護師人生の光も消え去っていたのかもしれない。

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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

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