・ ページ7
＿you side＿
「Aちゃんおはよー！！」
「先生でしょ。」
毎朝恒例、と言いたくはないけれど
もはや習慣となってしまった佐久間くんとのこのやり取り。
講義はちゃんと受けてくれるし成績も申し分ないから
中々はっきりと苦言を呈することが出来ない。
早く講義に行くよう促すと
素直に従って廊下を走って行く佐久間くんの後姿を見送りつつ
土日のパソコン作業でバキバキになってしまった肩をほぐした。
「そろそろ戴帽式か…」
戴帽式が終われば実習が始まる、
担当教員として病院に行くことになるこの時期は
心臓が変な音を立てて冷や汗が出る。
看護師を辞めて教員になったとはいえ
医療現場から完全に離れることは出来るはずもなく
震える手に気づかないふりをして大きく深呼吸をした。
「そろそろ戴帽式の時期が来ましたね、
その前には実技と筆記の試験、そして暗記テストがあります。
この試験を落とした学生は今まで一人もいません
落ちるなんて前代未聞です。」
看護教員は前代未聞という言葉が好きなのだろうか、
私が学生の頃も死ぬほど言われてきた。
「もちろん皆さんは…、佐久間くん！」
大きな講義室に一年生全員が集まる中
お局教員に名前を呼ばれてしまった佐久間くんは慌てて立ち上がる。
口元を拭く仕草からして寝ていたのだろう
いつかやらかすとは思っていたけれど、思わず頭を抱えてしまう。
「よほど自信があるようですね
講義の三分の一を睡眠学習にあてているようですし？」
わたしの講義では毎回起きてくれているのに
他の先生の時は寝ていたのか。
このままじゃお局教員の言う、前代未聞が起こりそうだ
それは何としても阻止したい。
「国家資格試験に落ちたらあなたたちはただの人！！
医療の現場はそんなに甘くないですからね。」
聞き覚えのある言葉の総集編に眩暈を起こしそうだ
現にここにいる看護教員は全員顔が死んでいる。
息の詰まりそうなこの状況の中
隣から規則的な寝息が聞こえて来て、恐る恐る隣に目を向けた。
「…渡辺先生、」
「んあっ！！」
私の声で飛び起きた渡辺先生は全員の視線を集め
その中にはもちろん、お局教員の鋭い睨みも含まれている
完全にやらかした、そう思っても時すでに遅い。
「二酸化炭素が充満して脳まで酸素が行ってないのよ！！
換気しなさい！環境整備の基本でしょ！！」
ああ、今すぐ帰りたい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます！読んでくださって嬉しいです！ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇♀️ (2022年10月21日 19時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、！ (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして！コメントありがとうございます🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです！最後まで頑張ります！ (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります！どうなっていくのか楽しみにしてます！ (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年9月23日 18時
