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阿部先輩と目黒さんにばったりと会ったあの日から
頭の隅に追いやって蓋をしていたはずの記憶が毎日過る。
寝ようとしても心臓がバクバクと大きな音を立てるから
眠れず寝不足気味になってしまった。




「情けないな、」





病院へ行くまでの道のりを一人歩く中
フラッシュバックするあの日の光景に悩まされながら
自分を責める言葉ばかりを吐き捨てる今の私は
きっと負のオーラで満ち溢れているだろう。






「新人さんかいな。」





病院に到着し中へ入ったはいいものの
階段へ向かうために通る中庭で足が止まる。
そんな私に声を掛けてきたのは
患者であろうスエット姿の高齢者で、言葉の意味が分からずフリーズした。




「ここで生活してたらきっと良くなるよ。」




「…あ、私患者じゃなくて」




「俺がここに来た時も、今のあんたみたいでな」






そこまで重症に見えているのか、
このままじゃ仕事に支障が出てしまう。
誤解を何とか解き、重い足を引きずりながら病棟へ向かうと
実習用にと貸し出してくれているカンファレンス室を借りて
学生たちのレポートを確認しようとナースステーションに寄った。




「Aちゃん」




ナースステーションには阿部先輩一人だけがいて
ひとまず目黒さんがいないことで体の力が抜けた。




「この前はごめんね。」




「いえ、」





静かな空間に響く私達の声は
何だか変な緊張感が走って居心地が悪い。
早くここを出ようと、デスクの隅に置かれたレポートに手を伸ばした。





「この前学生さんたちと入浴介助に入ったんだけどさ」





「な、何か不手際とか!?」





学生という単語に食いつくと
阿部先輩は一瞬驚いた表情を見せたけれど
すぐに笑顔になり、口元を手で隠した。




「心配性なのは昔と変わんないね。」




「すいません…。」




「みんなすごくいい子たちだよ、しっかりしてるし将来安泰。」





阿部先輩はお世辞を言うような人ではない
だからこそ学生たちを褒める言葉が嬉しくて
自然とこちらまで笑顔になった。





「Aちゃんには笑っていて欲しいな
 …欲を言えば、また俺とめめと三人で」




阿部先輩がそう言いかけた時、ナースコールが鳴った。
すぐに対応すると、先輩の表情はどんどん曇っていき
慌てた様子で受話器を元に戻した。





「患者さんが興奮状態で
 学生さん一人を個室に閉じ込めてるみたい!」






一気に血の気が引いていくのが分かった。

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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

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