憧れた天使にはなれなかった 前編

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＿you side＿





「康二、大学続けるって約束してくれた！」





朝一番に伝えに来てくれた佐久間くんに
ホッと胸を撫でおろし安堵から笑みがこぼれた。
やっぱり彼に任せたのは正解だった
きっと私だけだったら無理だっただろう。




「実習は大丈夫そう？」




「ばっちり！
　学内実習で今日の分のレポートは終わらせてたから。」




「ちゃっかりしてるな…。」




そんな私のつぶやきに笑いながら首を傾げる、
そう言えばこの仕草をしているところをたまに見かけた。






「病棟では首を傾げないようにね。」




「え？」



「自分の話が通じていないのかもしれない、
　馬鹿にされているかもしれないって
　患者さんに誤解されちゃう可能性があるから。」





精神科ならなおのことだ
何気ない仕草や言葉が、その人を不安にさせてしまう事がある。
佐久間くんはいまいちピンと来ていないようだったけれど
元気に返事をしてくれたから良しとしよう。




「今日は13班の実習先の主任さんが急遽休みになったので
　代わりに目黒さんって人が指導者を担当するそうなので。」





お局教員からの言伝に、一気に血の気が引いた。
最悪だ、というか看護師歴的に指導者にはなれないはず
人手不足とはいえそれはどうなんだ。




「指導者さんが急遽お休みになったそうなので
　今日は他の看護師さんが担当してくれるらしいから
　目黒さんって人に対応してもらってね。」





急いで13班の子たちに知らせると
女子学生たちが色めき立つのが分かった。
背も高くて顔もよかったから、学生時代からモテてはいたけれど
女子大生受けもいいのかと謎の関心が芽生えた。





「実習も折り返し地点でケアも始まるけど
　緊張せず丁寧にやれば
　必ず指導者さんにOKをもらえるよ。」





学生たちに励ましの声を掛けると
全員がいい笑顔で返事をしてくれて安心する。
困っていそうな子はいないようだ
頑張っているのは十分に伝わってくるから、心配はしていなかったけれど。





「Aちゃん、さっきより顔色悪くない？」




佐久間くんに指摘されてしまい
他の子たちも顔を覗き込もうとしてくるから
慌てて否定をし笑顔を見せてみんなから離れた。





「神崎先生、なんか顔色悪くないですか？」





私が実習担当している
もう一つのグループメンバーである村上くんにもそう言われて
そんなに酷いかと手鏡で確認すると
唇まで血色が悪い、不甲斐ない顔がそこに映っていた。

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