・ ページ33
・
「多分俺も、康二が受け持った患者さんの担当をしてたら
同じように感じて、同じように悩んだと思う。」
変に飾った表現や意識した言葉はいらない
きっと康二の心に入っていける言葉は
俺の正直な気持ちだと思った。
「正直投げ出したと思う。」
「…、」
「康二に比べたらしょうもないことだけど
年齢で周りから少し距離を置かれたり
勉強に一人ついていけなくて、何度も逃げ出そうとしたよ。」
バイトに明け暮れていたのも
お金を溜めたかったのは勿論だけれど
看護師に慣れなかった時の居場所をキープしておきたかったからだ。
「前の職場の人からもさ
いつでも戻ってこいって連絡もらってて」
「そう、なんや」
「先生達からこのままじゃ看護師になれないよって
この大学に入ってから何回も言われてきたけど
俺自身が一番、看護師になれないだろうって思ってた。」
俺みたいなやつがなれっこないって
心のどこかで思っていた。
頑張れば資格は取れるかもしれないけれど
俺が憧れていた、思い描いていた看護師にはなれないって。
「でもさ、今はそんなこと思ってない。」
「え？」
「一緒に看護師になろうって
同じ方向を見て歩く奴らが俺にはついてるから。」
照れ臭く思いつつも言い放った言葉に
俺の胸に顔をうずくめていた康二が顔を上げた。
驚きで頭が回らないのか
目を丸くしてキョトンとした表情を浮かべている。
これはもっとはっきり言わなきゃいけないパターンなのか
赤くなった耳タブを親指と人差し指で挟むと
咳払いをして背筋を伸ばした。
「経験からアドバイスをくれる照と
同期として時には厳しく叱ってくれるラウールと
隣に寄り添って励ましてくれる康二がいるからさ」
「佐久間くん、」
「俺だけ辞めるわけにはいかない！って
つまずいたり盛大に転んだりするけど
頑張ってみんなと足並み揃えて看護師になろうって思ってる。」
「…っ、」
「康二の人生だから、強制はしない。
今の気持ちが変わらないならもう止めない
でも、一緒に看護師になるって約束はいつまでも有効だよ。」
今日は帰ろう、そう思って立ち上がると
右手が控えめに握られて視線を下げる。
「…もうちょっと、頑張ってみる。」
そう言った康二の表情は少し明るくて
俺は大きく頷くと、強めに背中を叩き鼓舞した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます！読んでくださって嬉しいです！ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇♀️ (2022年10月21日 19時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、！ (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして！コメントありがとうございます🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです！最後まで頑張ります！ (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります！どうなっていくのか楽しみにしてます！ (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年9月23日 18時
