第五章 自信は簡単に崩れ去る ページ31
＿Sakuma side＿
“はい、どちら様でしょうか。”
「あの僕、康二…くんと同じ大学に通ってまして
佐久間大介と言います！」
教えてもらった住所に辿り着いて
インターホン越しにぎこちなく自己紹介をすると
勢いよく扉が開いてお母さんらしき人が現れた。
はつらつな笑顔で俺を出迎えると
家の中へ入るよう促してきて
お言葉に甘えて通されたリビングのソファーに腰かけると
しばらくして康二がひょっこりと顔を出した。
「ごめんなわざわざ、
まだ実習終わってないのに…。」
「友達のピンチを放っておくほど
俺は薄情な人間じゃないよ。」
「やな、佐久間くん優しいもん。」
康二の方が何倍も優しいのに
なんて喉元まで出てきた思いは、何となく引っ込めた。
今はその言葉が康二を苦しめるような気がして
ただ微笑んで頷き、そこから話を広げるのはやめた。
「Aちゃんから聞いて、退学届の事。」
「ああ…やっぱずっと隠してるのは無理やな。」
「本気でやめるの？」
俺からの問いに康二は答えることなく
人差し指で軽く鼻を掻いて掃き出し窓へ目を向けた。
釣られるように同じ方向を見てみると
すっかり暗くなった外には綺麗な満月が浮かんでいた。
「患者さん、そろそろなんやって。」
「え？」
「毎日怒鳴られてたのに
ある日突然寝たきりになって…どんどん元気なくなって
まるで別人みたいに優しくなった。」
康二は唇を噛みしめて必死に堪えているようだけれど
目には涙の膜が張られていて
しばらくして、大粒の涙が溢れ出た。
「せん妄…やったみたい。」
「そっか、」
「ちゃんと勉強したはずやのに
俺何もわかってなかった…っ、」
せん妄とは、貧血や肝・腎臓障害
感染症や薬の影響などといった身体的な原因によって
幻覚や妄想が出たりすることをさす。
常に怒鳴っていたのは患者さんの性格ではなく
せん妄の症状が表れていたからだった。
「俺実習入るタイミングで新しい薬の投与が始まったみたいで
それが原因ちゃうかって、だから看護師さんも気づかんくて
俺に強く当たってたことは覚えてないみたい。」
認知症とは違い、せん妄は一過性のものだから
正しい処置をすれば改善される。
せん妄状態だった時の事を覚えている場合が多いけれど
中には全く覚えていない患者もいる。
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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます！読んでくださって嬉しいです！ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇♀️ (2022年10月21日 19時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、！ (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして！コメントありがとうございます🙇♀️そう言っていただけて嬉しいです！最後まで頑張ります！ (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります！どうなっていくのか楽しみにしてます！ (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年9月23日 18時
