検索窓
今日:8 hit、昨日:22 hit、合計:225,982 hit

ページ29





「あっ、」




でも、気持ちが休まったのも束の間
こんなところにいるはずのない聞き覚えのある声が聞こえた。

足が鉛のように重くなり固まって
少し先を歩く渡辺先生もそれに気づき立ち止まると
私の背後を見て険しい表情を浮かべた。





「Aちゃん、」





この声は明らかに阿部先輩だ。




どうか一人でありますように
そんな願いは虚しく散っていって
無視するのもよくないからと、ぎこちなく振り返ると
案の定、先輩の隣には目黒さんの姿があった。





「Aちゃん、ここら辺に住んでるの?」




「えっと…」





にこやかに会話を続けようとする阿部先輩に反して
目黒さんは相変わらずの冷たい視線。
今すぐここから逃げ出したいけれど足がすくむ
そんな中、渡辺先生が私に駆け寄ってきて右手を掴まれた。




「A行くぞ。」





手を掴まれたまま駅の方へと引っ張られて
私は顔を俯かせてそのまま足を動かした。






「病院からも逃げて俺らからも逃げんの」




「めめ、いい加減にしろ。」




やっと足が動いたというのに
凍り付くような声色で言葉を吐き捨てる目黒さんに
私は再び足が止まってしまった。




「引き継ぎもしないで、
 お前がいるから頑張るって言い張ってた子供たち見捨てて
 自分だけが被害者みたいな顔してある日突然消えて
 そのくせ次に着いた職が看護教員って」




「…っ」




「何がしたいんだよ、お前。」












“この人殺し…っ、息子を返して!!”











あの日の自分が、情けない自分の顔が思い浮かんで
何も言うことができないまま涙を堪えた。



目黒さんの言う通り
自分でも何がしたいのかわからない。
それでも私は、この道から完全に離れることが嫌で
それはきっとこれからも同じで





「…私にもわかんない。」




「Aちゃん、」




「わかんないから、ここにいるんだよ。」





渡辺先生の手を振り払って
駅へと一人、全力で走り出した。







結局私は逃げるという方法しか知らない
何か問題に直面した時
逃げるという選択肢があることを知ってしまったから
私はきっとこれから先も








現実から、過去から
目黒さんや阿部先輩達から
看護師という肩書から逃げるんだろう。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (452 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1446人がお気に入り
設定タグ:SnowMan , 佐久間大介 , 目黒蓮
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。