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グループメンバーから聞いていた通り
看護師さんたちは優しい…とは言えないかもしれないけれど
話に聞いていた理不尽な対応もされないし
挨拶は返ってくるし、伸び伸びと実習をさせてくれている。




「ええなぁ、俺らの学科も実習始まったけど
 失礼を承知で言うと絵に描いたような外れ病棟やわ。」




「それは…ご愁傷様…。」




「業務と並行して学生に教えるのが大変なのもわかるけど
 こっちかて実習費用込みで学費払ってるんやから
 せめて人として扱って欲しいわ。」




俺達の学科より少し遅れて実習に入った康二は
いつもの元気はなく、少しやつれて見える。
食堂で一緒に夕食を取っている今も、康二の箸は進んでいなくて
ただでさえ痩せているのにどんどん細くなっていってしまう。



「まだ事後学習も終わってなし、明日の目標も立ててないから
 先に上戻ってるな。」




まだ実習が始まって間もないのにあそこまでやつれるなんて
康二が行っている病棟は刑務所か監獄なのだろうか。

俺もずれはキツイ病棟へ実習に行くのだろうか
考えただけで身震いしてしまうけれど
とにかく今は、康二が潰れないように祈るだけだ。




「康二、今回の受け持ちが余命宣告済みの患者なんだよ。」




「照…。」




康二が座っていた席に腰かけたのは
遅れて食事を取りに来た照で
こちらを見ることなく、手を合わせた後箸を握ると
おかずを突きながら話の続きをした。




「余命を受け入れられてないみたいで
 やり場のない感情を康二に全部ぶつけてる状態。」




「そっか、照同じグループだっけ」




「かなり高齢の人なんだけど
 毎日えげつない怒鳴り声が聞こえてくるよ。
 俺の受け持ちは二つ隣の個室を使ってるのに
 言葉が全部聞き取れるレベル。」





どうやら受け持ち患者にも問題があるようだ。



勿論、講義ではいろんな事例を使って
病状や性格などを考慮し看護内容を考える練習はしている。
でもそれは、机上の空論でしかなくて
実際にその病気を抱え病院の中で生活をしている患者を目の前に
それを活かせる学生は、果たしてどれだけいるだろうか。




「佐久間も実習で大変だろうけど
 少し気にかけていやってよ。」




「うん、勿論。」





みんなで卒業、言葉にはしないけれど
俺たち四人の中で強く意識していることだ。
どんなに過酷で辛くても、きっと大丈夫
そう思っていた。







でも康二は、日曜日の帰省を最後に
寮へ戻ってこなくなった。

・→←第四章 一筋縄ではいかない



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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

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