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_you side_




「よろしくお願いします!」




学生たちが元気よく発した挨拶に
まちまちだが看護師から返事があって
安堵から小さく溜息をついた。




「今回の実習を担当します、長谷部です。」




担当は主任、周りの看護師との接し方を見るに優しそうで
精神科とはいえ退院を控えている患者ばかりで
下の階にある売店へ行くことも許されていて症状は軽く
いわゆるあたり病棟、といったところだろう。




「…、」




「Aちゃんどうしたの?」




こそっと佐久間くんが声を掛けて来て
大丈夫だからと軽く背中を叩いた。

見た感じ、彼はいない。
渡辺先生の言っていた通りで
そんな小説やドラマの様な突然の再会は避けられたようだ。





「こんなこと考えてる場合じゃないや。」





二つのグループを受け持っている私は
これから病棟見学へ向かう学生たちにエールを送って
一つ下の階へと足を進めた。

カンファレンスの時間を被らないようにしてと伝えなきゃ
一日目から泣く子はいないだろうけれどメンタルフォローも忘れずに
仕事モードに頭を切り替えると、考えることは山ほどある。





「あ、すいません!!」






急ぐ気持ちが前に出て、歩くスピードが速くなり
曲がり角から来る人の気配に気づくことができず
危うくぶつかりそうになったところで立ち止まった。





「大丈夫ですよ。」




「不注意で、本当に…っ」




やっぱりこの世界は…事実は、小説より奇なり。
顔を上げると見覚えのある人がそこにはいて
私と同じように驚いた表情を浮かべている。




「阿部先輩…」




「えっと、久しぶり。」




驚いた表情はすぐに、昔と変わらない笑みに変わったけれど
私は動揺が隠せず背中に冷や汗が伝う。





「Aちゃん、何処の病棟に」




「お前、ぶつかりそうになったのが患者だったらどうすんの。」





阿部先輩の言葉を遮ったその声に、体が固まった。






先輩の後ろに目を向けることができない
石のように固まった体はいう事を聞かず動かなくて
ただ足元を見つめ俯くことしかできない。





「看護師辞めて正解だよ、
 廊下は走らないって基礎中の常識が守れないなんて。」




「おい、」






ああ、やっぱり私に白衣を着る資格はないんだ。
ようやく顔を動かし見上げた先には
見間違う事のない、目黒くんの姿があって
彼の視線は、私に鋭く注がれていた。

第四章 一筋縄ではいかない→←・



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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

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