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仕事をこなし、なんとか19時に終わらせて
家に帰ろうとしたところを阿部ちゃんに引き留められた。


珍しく飲みに行こうなんて誘ってくるから
断る理由もなく近くの居酒屋へ向かうと
飲み物を頼んだ後、阿部ちゃんの方から口を開いた。




「…今回来る大学の担当教員に
 神崎Aがいるんだって。」




メニュー表を捲っていた手が止まり
ゆっくりと阿部ちゃんの方に視線を向けると
こちらを見ることなく、窓の外を眺めながら
そのまま淡々と話を続けた。




「完全に看護から離れたわけじゃなかったんだね。」




「…俺には関係ないから。」




「そうかな、手震えてるけど。」




慌てて両手をテーブルの下に隠すと
タイミングがいいのか悪いのか注文していたものが届いて
阿部ちゃんはいつもの笑顔で適当につまみを注文していった。



もうその名前を聞くことはないと思っていた
数年前の姿で記憶が止まっている彼女は
思いもよらぬところでこの世界を生きていた。




「うちの病棟だったりして。」




「ないでしょ。」



冷静を装って再びメニューに目を向けるけれど
文字なんて一つも頭に入ってこなくて
どんどん昔の記憶が蘇ってくる。




「たとえ教員だとしても
 この道を完全に絶ったわけじゃないようなら嬉しいよ。」




「…中途半端に逃げただけでしょ。」




「その言い方はないだろ。」




笑顔が一瞬で消えて
真剣な表情で諭すように呟く阿部ちゃんに
気まずさが勝って目を逸らした。

正面から大きな溜息が聞こえて来たけれど
聞こえないふりをして、ビールをジョッキの半分ほど飲んだ。




「あの出来事は他人ごとじゃないんだよ
 Aちゃんじゃなくて、俺達が当事者だった可能性だってある。」




その言葉が重くのしかかって
店内は騒がしいはずなのに何も聞こえなくなる。
阿部ちゃんも俺と同じで表情は険しく
はじけたビールの炭酸をただじっと眺めていた。




「…だとしても、俺がもしあいつの立場だったとしても
 看護師は絶対辞めなかった。」





「めめ、」




「この仕事でずっと頑張っていくって
 学生の頃から決めてたから。」




テーブルに店員が綺麗に並べたつまみに箸を伸ばし
それを流し込むように残りの酒を流し込むと
同じものを頼んでジョッキを回収してもらった。




創作物じゃないんだ、この現実世界で
あいつに会うことはもうないだろう。







会ったところで、突き放すだけだけれど。

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ぱぐたろう(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです!ここから後半戦に入りますので、ゆっくりにはなりますが最後までよろしくお願いします🙇‍♀️ (2022年10月21日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 最新話がなんか切なくて泣いちゃいました(;_;) 毎回更新して下さるの嬉しいです(><) 無理の無い程度に更新頑張ってください、! (2022年10月17日 23時) (レス) @page40 id: 4d27a85535 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - aggyさん» はじめまして!コメントありがとうございます🙇‍♀️そう言っていただけて嬉しいです!最後まで頑張ります! (2022年9月24日 19時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
aggy(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します。わかりみが深すぎるお話で続きが気になります!どうなっていくのか楽しみにしてます! (2022年9月24日 10時) (レス) id: f3f23b79cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2022年9月23日 18時

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