6 ページ6
・
「大学は水泳で推薦を貰ってた。
そんな矢先の出来事だったから
足は失うし推薦は取り消しになるし
私の人生最悪なの。」
「…。」
「ありがちでしょ、でもそんなもんよ
他人から見たらたいしたことなかったりする方が多いでしょ。」
横目にカウンター内を見ると
深澤さんが悔しそうな表情で唇を噛みしめている。
見ていられなくて視線をAちゃんに戻すと
ケロッとした顔でオムライスを食べ終わり、一息ついていた。
「で、でも…
義足の水泳選手だっているし
もう少し違う道を考えれば…！」
「私は自分の足で泳ぎたいの。」
笑みを浮かべてそう呟くAちゃんを見て
自分はなんて無責任なことを言ったんだと反省した。
頭を下げると彼女はまた笑って
全く痛くないチョップをかましてきた。
「気にしてないよ
こればっかりは当事者にしかわからない気持ちだし
…とにかくもう昨日みたいに邪魔しないでね。」
財布を取り出しお金をテーブルに置くと
自分でブレーキを外し動き出した。
俺も慌てて立ち上がろうとすると
顔の前に手を突き出され止められた。
「まだ食べ終わってないじゃん、
ここのオムライス絶品なんだから残すのもったいない
それに私の奢りなんだから食べてよ。」
「いや、俺の奢りだって…」
「引っ越し祝いってことで〜。」
呆然と立ち尽くす俺に見向きもせず
深澤さんを呼び外へ出してもらうと
自力でハンドリムを漕ぎ家の方向へ進みだしていった。
「良かったらカウンターで食べない？」
「え、ああ…」
「Aちゃんの友達は俺の親友！
仲良くなりたいからちょっとお話しようよ。」
食べかけのオムライスとジュースをカウンター席に運び
俺に座るよう促してくる深澤さん。
断る理由もなく籍に着くと
深澤さんはレコードを整理しながら話し始めた。
「Aちゃんにと話す時さ
足の話には触れないように
足を連想することは話さないようにしてあげて欲しい。」
「へ…？」
「彼女すっごく不安定だから、ね？」
きっとこれは深澤さんなりの優しさ、
でも俺はそのことに納得がいかなかった。
「…それじゃあ根本的な解決になりません！
死にたいって思わないようにするには
足の事を受け止めるしかないんですから…っ、」
どうしてこうも知り合ったばかりの彼女を気にかけるのか
助けた手前情が湧いたのか
当時の俺は、自分の感情がよくわからなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 659人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱぐたろう(プロフ) - ぴくみんさん» 読んでいただきありがとうございました！！書くこと自体迷っていたお話だったのですが、書いてよかったです。次も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (
レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ゆりあさん» ありがとうございました！凄く迷いながら時間をかけて書いたお話なので、そう言っていただけて凄く嬉しいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - こころさん» 読んでいただきありがとうございました！そう言っていただけて凄く嬉しいです！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ぐりーんかれーさん» ありがとうございます！楽しんでいただけて凄く嬉しいです。次回も頑張りますのでよろしくお願いします！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 名前さん» ありがとうございました！受け取りての方によって違う感じ方を楽しんでいただければと思い書いてみました。次のお話も頑張ります！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年8月10日 19時
