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「本当にすいません!」



「いやいやそんな…」



母に上から押さえつけられて
宮舘と書かれた表札前で、二人で深々と頭を下げていると
人のよさそうな男性が胸の位置で両手を振って
頭を上げるように促してきた。



「うちの息子はちょっと…だいぶ変わってますけど
 不審者ではないので!」



「はは、大丈夫ですから。
 …多分妹の事を助けてくれたんでしょうし。」



「大介が?」



二人の視線が一気に俺を捉えて
言っていいものかと躊躇しながらも事の発端を話すと
男性は慣れているのか眉を下げて
今度は俺に向かって頭を下げてきた。



「うちの妹がご迷惑をおかけして…」



「いや、俺が勝手にやったことで!!」



「…妹はちょっと不安定なところがあって、」



言葉を濁すようにそう言うと
男性はまた困ったように笑って
俺と母は顔を見合わせて首を傾げた。



「涼太は余計な事言わなくていいから。」



「A…。」



「あとさ、次見つけても邪魔しないでよ。」



「Aいい加減に…!
 本当にすいません、」



再び現れた彼女は車椅子姿で、目線を下にずらすと
ブランケットの隙間から銀色の足が見えた。



「見てんじゃねえよ。」



「あ、すいません…っ」



「A!
 佐久間くんごめんね。」



彼女は足を隠すようにブランケットを掛け直すと
お兄さんの呼び止める声を無視して何処かへ行ってしまった。



あの後、俺が謝りに行ったはずなのに
何度も頭を下げられてしまって
なだめているうちに太陽の位置が低くなっていた。
新しい自宅の縁側で夕日に照らされながら考えることは
鋭い目つきで俺を睨んだ彼女の事だった。



「義足ってやつかな。」



「多分ね、あんまり触れられたくないんだよ。
 大介はじっと見る癖があるから
 少しは直しなさいよ?」



「ほーい。」



母の言葉に少し反省すると
軒下につるされた風鈴を眺めた。
日が少し落ちたから冷気を含んだ風が吹き込んできて
ピンク色の短冊が揺れ外身に舌が当たり涼しげな音を鳴らした。

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ぱぐたろう(プロフ) - ぴくみんさん» 読んでいただきありがとうございました!!書くこと自体迷っていたお話だったのですが、書いてよかったです。次も楽しんでいただけるよう頑張ります! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ゆりあさん» ありがとうございました!凄く迷いながら時間をかけて書いたお話なので、そう言っていただけて凄く嬉しいです。 (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - こころさん» 読んでいただきありがとうございました!そう言っていただけて凄く嬉しいです! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - ぐりーんかれーさん» ありがとうございます!楽しんでいただけて凄く嬉しいです。次回も頑張りますのでよろしくお願いします! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 名前さん» ありがとうございました!受け取りての方によって違う感じ方を楽しんでいただければと思い書いてみました。次のお話も頑張ります! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぱぐたろう | 作成日時:2021年8月10日 19時

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