桜麗華学院の〈桜国〉

5話 ページ8

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私を見つめてくるのは、桜国の姫様と門番様。
二人は優しそうな目で見てくる。

「大丈夫ですか！？一体誰に……」

「月雪 姫香様にやられました……っ、私は【生贄】の田中 晶子です」

この学院には、生贄制度がある。
女王様の気分でターゲットを決められるのだ。


以前、気弱だった私は女王様の歩く廊下で転んてしまった。その時に謝るのを忘れてしまって──気分を損ねた女王様は私を【生贄】にした。

最近は虐めが無いから楽だと思っていたのに──！
あのぶりっ子転校生、調子に乗りやがって……。

「傷とか大丈夫？保健室行こっか？」

「いえ、大丈夫です……」

「ほんとに？無理しないでよー？」

「はい、本当にありがとうございました」

出来るだけ悪印象を与えない様に姫様と門番様に挨拶をし、教室まで帰った。

────

「ねぇねぇ、お母さんとお父さんどこで働いてるの〜？教えてよ、ねぇお願い〜っ」

姫香は私に懐いてくる。はっきり言ってキモい。

「私の母と父は香水メーカーで働いているわ。知らないかしら？『Night Blossom』」

「あーっ、知ってるぅ！」

目をキラキラ輝かせ叫ぶ。周りの人が可哀想な目でこちらを見てくる。腹立たしい……。

「あたし今日ナイブロの香水やって来たんだ〜！ほら、新作の『月の香水』！ムーンコロン！」

因みにナイブロはブランドの略称ね。


あー、めんどくさいわ。早く離れてくれないかしら。まあ今度潰してあげるからいいんだけど。

「はぁ、はぁ、はぁ──ッ」

後ろのドアが開き、【生贄】の田中が入ってくる。クスクスとした笑い声が聞こえてくる。

「あら、田中さんじゃない。久しぶり。私貴方に飽きたから、退学で良いわよ、さよなら」

突然言ったのが相当なショックだったのか、田中はがっくりと項垂れる。そして現れるのは、美春。


「私は従者の宝華です。退学届を持って来たので、全ての荷物を持ち正門まで行きましょう」

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