検索窓
今日:45 hit、昨日:17 hit、合計:429,765 hit

8-5 ページ31

何も言えない俺。

無惨くんがふと俺の足元を見て先程までの楽しそうな表情は一変した。



「A…その足はどうした?」

「…俺、多分未来へ帰れる事になったんだ」


その瞬間、無惨くんが掴みかかって来た。
咄嗟の事で対応できなかった俺はそのまま床に押し倒される。


「許さない…私を置いて未来に帰るなど許さないぞ!」

「む、無惨くん…」



豹変した彼に驚きを隠せない。
自分が殺されるかもしれない時には飄々としていたのに、俺が居なくなると分かった途端にここまで取り乱すとは。



「私を殺したければ殺せば良い。だがしかし、私を1人にする事だけは許さない。認めないぞA」


ポロリと無惨くんの目から溢れた涙が俺の頬に落ちる。
殺したければ殺せと彼は言った。1人にするなとも。
それ程までに、鬼舞辻無惨は孤独だったのだ。
その孤独を俺が埋めてしまった。もう彼の前から居なくなってしまう俺が。

もう既に上半身も消えかかっている俺に、さらに無惨くんが叫ぶ様に言葉を吐き出す。


「何故私の前に現れた!何故死を待つだけの私をその暖かさで包み込んだ!お前が消えてしまうなら、こんな気持ちを抱くくらいなら、Aとなど……!!!」




出逢わなければ良かった。

その言葉は音にはならなかったけれど。確かに彼はそう言った。



無惨くん。
俺も同じ気持ちなんだよ。
君は知らないだろうけど、遠い未来で俺たちは殺し合う関係なんだ。
君がこんなに優しい事を、知りたくなんてなかった。


だけど。


「無惨くんと過ごした時間は、楽しかったよ」


確かに楽しかった。穏やかな日々を俺たちは一緒に過ごしたんだ。
俺の頬を濡らすのが俺の涙なのか、無惨くんの涙なのか既に分からない。




いくら未来に戻った先の俺たちが敵対関係だろうが、今ここにいる無惨くんと俺は友達だったんだ。

それだけは、否定したくないな。



「Aっ!!!」



そう叫ぶ彼の腕の中には、既に誰も居なかった。





_

8.5-1→←8-4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (209 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
592人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

河岸エマ(プロフ) - 爽雫さん» うわあぁ私も大好きです!設定を上手く活かせてない気もしますが頑張ります!!モチベめっちゃ上がりました!ありがとうございます!! (2020年2月24日 14時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
爽雫 - 童磨の息子なんて神設定じゃないですか!?凄い続き楽しみです。更新頑張って下さい!応援しています!!だいすきです(*>∀<*) (2020年2月24日 14時) (レス) id: c8b0ff9423 (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - お虫さん» ありがとうございます!近々更新すると思うのでまたよろしくお願いします! (2020年2月23日 23時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
お虫 - 好きです!次の更新楽しみに待ってます! (2020年2月23日 7時) (レス) id: 2f9884d86e (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - アンちゃんさん» マジですか?!それは嬉しいです!pixivでもこちらでもよろしくお願いします!! (2020年2月15日 21時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:河岸エマ | 作成日時:2020年2月15日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。