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「いつまでやってるんだ」
「獪岳」
どんよりと落ち込んでいると獪岳に声をかけられた。
遅くなった俺を探しに来てくれたんだろう。
今ではこの不器用な優しさにすっかり慣れてしまった。
夜食だと言って手渡された握り飯を食べていると、獪岳が隣に座ってきた。
「明日も早いんだ。さっさと寝ろ」
「うん、もう少し練習したら休むよ」
おむすびありがとう、とお礼を言って立ち上がろうとすると、グイッと獪岳に引っ張られた。
「テメェは…テメェはなんでそこまでして使えもしねえ呼吸を覚えようとするんだ?力は弱い、呼吸も使えないのなら鬼殺隊なんか諦めたて別の道だってあるだろうが。いくら上の命令とはいえ逃げちまえばどうにでもなるし、その顔があれば金だってどうにかなるだろ?」
確かに、しのぶさんも言った様に本当に嫌なら鬼殺隊にはならなくてもいいのかもしれない。
鬼を倒していく上で、呼吸が使えないとなるとかなりのリスクがある。
そもそも首が切れないんだ。俺はしのぶさんの様に毒を扱うワケでも、突きの力が強いワケでもない。
いくら氷の力が有ったって上弦の鬼相手にどこまで通じるかは分からない。
それでも…
「逃げたくないんだ…」
しのぶさんに頑張るって言ったんだ。
善逸と共に戦うと決めたんだ。
お師匠さまと獪岳に鍛えてもらったんだ。
「今逃げたら、俺が俺じゃあなくなってしまう気がする。守りたい人を守れなくなってしまう。共に歩めなくなってしまう。だから俺は逃げないよ」
だから獪岳も、もう逃げないで。
最後の言葉は音には出来ない。
俺には獪岳の必死に生きてきた人生を否定する事なんて出来ないから。
「…逃げない事で自分が死ぬ事になってもか?」
「…うん。逃げてしまったら、きっと俺は笑って死ねない。後悔して1人で死ぬよりは、逃げずに笑って死にたい。精一杯生きたぞ!って思いながら死にたい」
「…そうかよ、勝手にしろ」
俺はもう、獪岳がいい奴だって、知ってしまったから。獪岳だって守りたい人の1人なんだよ。
去って行く獪岳の背中を見ながら、俺との出会いが、少しでも獪岳を変えれたらいいのになぁ、なんて思った。
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河岸エマ(プロフ) - 爽雫さん» うわあぁ私も大好きです!設定を上手く活かせてない気もしますが頑張ります!!モチベめっちゃ上がりました!ありがとうございます!! (2020年2月24日 14時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
爽雫 - 童磨の息子なんて神設定じゃないですか!?凄い続き楽しみです。更新頑張って下さい!応援しています!!だいすきです(*>∀<*) (2020年2月24日 14時) (レス) id: c8b0ff9423 (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - お虫さん» ありがとうございます!近々更新すると思うのでまたよろしくお願いします! (2020年2月23日 23時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
お虫 - 好きです!次の更新楽しみに待ってます! (2020年2月23日 7時) (レス) id: 2f9884d86e (このIDを非表示/違反報告)
河岸エマ(プロフ) - アンちゃんさん» マジですか?!それは嬉しいです!pixivでもこちらでもよろしくお願いします!! (2020年2月15日 21時) (レス) id: b2cd8ae7ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:河岸エマ | 作成日時:2020年2月15日 16時