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「一織たちは何してるの?」
「白い子猫を探しているんです」
「へえ、飼い猫?」
「いえ。四葉さんが見かけたと言っていたので。てんてんちゃんです」
だから牛乳の入った小皿を持っているのかと納得すると同時に、飼い猫ではないのに名前がついていること、そして一織が言ったてんてんという名前にAは違和感を抱いた。因みに、環はクッキーに夢中で話を聞いていないようだ。
「ねえ、四葉環。てんてんって猫なの?」
「んーん。TRIGGERのセンターの」
「…なるほど」
環にこそっと小さく問いかけるA。
帰ってきた返答にAは大体の状況を把握した。
一織にはその会話が聞こえていないようで2人の様子を怪訝そうに見つめている。
つまり、天を見かけた環は彼に「てんてん」という渾名をつけたのだろう。そしてそれを一織は何故だか知らないが猫の名前だと勘違いしたようだ。一織は白い子猫だと言っていた。確かに、天の容姿を聞かれて「白くて小さい」(環から見れば、の話だが)と言われればまぁ子猫と勘違いしても不自然ではない。
「Aさんはどうされたんですか?」
「あー…お財布落として小銭ばらまいちゃっただけだよ。拾い終わったから気にしないで」
「そうですか。では、私たちはこれで」
咄嗟についたAの嘘に、一織は疑いもせずに別れの挨拶を告げる。
何をそんなに急いでいるのかとAは疑問に思ったが、彼の手にあるスマホが録画モードになっていること、そしてそのスマホの電池残量が17%であることに気がついて苦笑する。
なるほど、猫の動画を撮ろうとしているのか。
本来ならてんてんの正体を教えてあげるのが筋なのだろうが、ちょっと面白いから黙っていようとAは思った。これから巻き込まれる環に申し訳なく思う。まあクッキーのお代だと思ってくれ。
「あ、寒いのでよろしければこれをどうぞ」
そう言って一織は温かいカイロをAに渡し、再び歩き始めた。
その背中を見つめながら、申し訳ないことをしたなとAは心底一織に謝った。
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ドーナツ(プロフ) - 高沢さん» わー!!!ありがとうございます…!本当に悩んでいたのでありがたいです…!いつでもいくらでもリクエストお待ちしています〜!!本当にありがとうございます!! (2020年6月11日 1時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
高沢 - またリクエスト失礼してもよろしいでしょうか...? 赤面 と いつもと違う髪型 をお願いしたいです、、ふたつも無理言ってすみません(汗) (2020年6月11日 1時) (レス) id: a364a1dba9 (このIDを非表示/違反報告)
ドーナツ(プロフ) - 夢巫女さん» わー!いつもありがとうございます!!迷走中ですが、これからも読んで下さると嬉しいです!!更新頑張ります! (2020年6月4日 10時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
夢巫女 - こういう作品を待っていたっ!!最初の方から読んでいましたが、感謝を伝えたくて我慢できませんでした!これからも更新楽しみに待ってます! (2020年6月3日 22時) (レス) id: a86d07998f (このIDを非表示/違反報告)
ドーナツ(プロフ) - ぽんさん» わあ…!ありがとうございます!!凄く嬉しいです!更新マイペースですがこれからもよろしくお願いします〜!! (2020年5月26日 18時) (レス) id: f19df2fce1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドーナツ | 作成日時:2020年5月5日 23時