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Youside
その日の夕方、ヘリを見たくて装備品を持って行った。
『…あの、』
梶「ん?おお、どうした?」
『装備、やらせて頂いてもいいですか?』
梶「なんかあったか?」
『い、いえ。』
梶「あ、じゃ、じゃあゆっくりやれよ!」
パイロットの梶さんに軽く頭を下げてヘリの中に入る。
暫くすれば、颯馬がヘリまでやって来て聴診器を取りに来たみたいだった。
『…最低だよ、私。結局、自分が大事。
人には相談に乗るとか、言っておいて…彼氏の事は結局放棄。
もう二度と、会うことはないと思う。
こんな私が、ヘリに乗ってフライトドクターに慣れてたら…
それでいいのかな…?医者、やってていのかな。
こんな私が、ヘリに乗ってていのかな…?』
名取「……俺だって、思うよ。
自分には、医者になる気持ちなんてない。
結局俺も、自分が大事。名取家だからって、医者になって…
患者の気持ちを考えない医者。そう思われても仕方ない。
けどな、お前はちゃんと考えてるだろ。
人の痛みだってわかる、お前は自分が思ってるほど酷な人間じゃない。
俺の方がよっぽど、だ。お前は、医者になれる。
山田も言ってただろ?
今のAにはその言葉すら重荷かも知れないけど…
けど皆、お前以外は結局皆自分が大事なんだ。
けど俺は、お前や山田を放っておけなかった。
放って、自分が出来ることをすればいいのに、そうできなかった。
俺だって、最低な医者だよ。」
颯馬の真っ直ぐなその言葉に、ちゃんと伝えてくれたその言葉に、
もう、涙が止まらなくて…私はその後、ヘリの中でずっと泣いていた。
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作者名:反町ゆうり | 作成日時:2023年11月29日 8時