それぞれの最後�� ページ30
『士郎』
朝香が菊地原の名前を呼ぶ。
耳あたりの良い、安心する声色が菊地原の鼓膜を揺らす。そして、菊地原が返事をする。
「何ですか？」
『...いや、なんでもない』
「うーわ、それ一番嫌な奴じゃん」
『ごめんね』
そう言った朝香は薄桃色の唇の端を少し上げた。
そして、窓を閉めて施錠する。目の前にある、桜の木の蕾はまだ咲かない。しかし、もう少しすれば、また新たな出会いを花と共に運んで来てくれるのだろう。
「Aさん」
『ん？』
今度は菊地原が朝香の名前を呼ぶ。
朝香は窓の外を見ていた瞳を、菊地原へと向けた。
「...やっぱりいいです」
『仕返し？』
「まあそんなところですね」
『負けず嫌いも程々にね』
朝香はそう言って笑うと、自分の席へと戻る。
「...連絡、またしてもいいですか」
表情を変えずにそう言った菊地原。
彼なりに、朝香との繋がりを切りたくないと思った結果だったのだろう。朝香は自分を理解してくれる、唯一の存在なのだから。
『いいよ。士郎に、心を許せる人が出来るまでなら』
きっとこの先、菊地原の事を理解してくれる存在が現れると朝香は確信をしていた。
...それは、意外ともう近くに居たりして。
「お、朝香みーっけ！」
「お前まだ教室に居たのか」
再び入口が騒がしくなったと思えば、校庭集まりに朝香と菊地原が居ないことに気付いたボーダーの隊員達だった。「何？密会？！」とチヤホヤされるが、朝香は余裕のある対応をしていた。菊地原もこれといって表情を変えることなく、黙っていた。
「下に普通校の奴ら来てっぞ」
「AさんAさん！最後なので一緒に写真撮ってもらっていいですか？！」
『いいよ、とりあえず下行こうか』
宇佐美は嬉しそうに笑って、朝香もそれにつられ微笑む。そしてその間菊地原は、犬飼や荒船を初めとする男子メンツに色々聞かれていたが、進展という進展もないため「別に」と素っ気なく返していた。
最後に教室を出た朝香。
振り返り、大きく鼻から息を吸う。
そして香るのは、甘い青春の香り。
『＿＿＿＿』
そう、小さく呟いた。
「朝香ー、行くぞー」
『...今行く』
荒船に呼ばれた朝香も遂に、その場から居なくなった。
春の暖かな日差しが差し込む教室には、確かに二人の香りが残っていた。
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にこ(プロフ) - この度はこんなにも素晴らしい作品を作成してくださりありがとうございます（ ; ; ）出会えたことにとても感謝しております！他の作品も楽しみにしております！完結までお疲れ様でした＾＾ (2022年1月31日 0時) (
レス) @page32 id: 122cc99496 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - 綺世さん» 楽しみにしてます！(*´꒳`*) (2021年11月2日 16時) (レス) id: 60475fc3e4 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - そるとさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました！また作品を出した際にはよろしくお願いいたします。 (2021年11月2日 11時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ワールドトリガーで一番好きな作品だったので完結したのがとても嬉しい反面寂しい気がします、次作も楽しみにしてます！ (2021年11月2日 7時) (レス) @page32 id: 60475fc3e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺世 | 作成日時：2021年8月11日 3時
