29.恨まない ページ31
華相SIDE
あいつに親の質問するのはタブーだろ…、俺の方ちらちら見てんのめっちゃ気まずかったんだけどなぁ…。確かにあいつは俺が両親を殺しても怒らなかったし、泣くこともしなかった。諦め…とはまた違うけど、納得?って言えばいいのか?そんな感じの顔だった。
「紫苑、あまり気にしないでね。あの時は…紫苑が守ってくれなかったら二人一緒に殺されてたから」
華「そう言ってくれて助かるよ。でも…ホントに悲しくないのか?俺を恨んだりしてないか?」
俺がそう聞くと、Aちゃんは俺の両頬をぎゅっと挟んで言った。
「怒ってないし恨んでもないわ。もし恨んでいたら貴方を仲間に誘ったりなんてしないし、あの時に一緒に貴方のことも殺している」
…後悔しているのが俺だけってのもまたおかしいよな。もうこのことは…頭から消した方が良いか。忘れてしまおう。
過去に囚われてばかりいると今が見えなくなる。
「私はみんなが大好きよ。絶対に失いたくないの」
…!…不良とは思えないほどの真っ直ぐな告白。この真っ直ぐさが…、俺らを虜にさせるんだよな。本当に…罪深い人間。
「東卍の子たちはまだ完全に信用しきった訳じゃないけど、悪い子じゃないってことはわかった。だから…、私はあの子たちも好き」
華「優しいな、Aちゃんは。そんなに優しいと悪い人に騙されそう」
「私は用心深いと思うけど…、人を見る目はあるはずよ」
こんな俺を選んでいる時点で見る目があると言っていいものか…。でも、あいつらは確かにいい奴らばっかりだし、俺の仲間たちも信用できる人間だ。そう考えればAちゃんは相当用心深い人だって言ってもおかしくはないか。
「じゃ、ここで。また明日ね」
華「おー、じゃあな。おやすみ」
「うん、おやすみ」
Aちゃんは自分の家に帰っていった。親はいないしAちゃん自身もバイトをしている訳じゃないからどうやって生活しているのか気になるけど、ご飯食べていないわけじゃないし電気も水も使えてるようだから祖父母にでも仕送り貰ってんだろうか。
俺が一緒に住んでやれたらいいんだけどな、俺大学行きながらバイトしてるし。親からの仕送りもあるし。
華「…人にはため込むなとか感情は出せとか言うくせに…、自分はどうなってもいいのかよ」
Aちゃんが壊れそうになっても、俺らは多分気づけない。Aちゃんは本当の自分を隠すことが上手だから。
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作者名:suffron* | 作成日時:2022年9月19日 20時