２０．タイムトラベラー ページ22
花桐SIDE
今、病室には私と花垣武道しかいない。それに私は動けない状態、一人でも仲間を残してほしかったところだけどこの人の真剣な顔を見たらそんな願いは言えなくなった。
武「Aさん…、Aさんはタイムリープって信じますか？」
いきなり…何…？
「えっと…、タイムトラベルと一緒の概念でいいの？」
武「はい」
「…現実的に考えればそんなことはあり得ないけど…」
この人は…、何が言いたいんだろう。私にタイムトラベルの話をしたところで何の生産性もないのに。…まさか、この人自身がタイムトラベラーってこと？
「貴方が…そうなの？」
武「…！やっぱり…、Aさんは賢いっすね」
「…トラベラーってことは私たちが９月１日に抗争を起こすことも、こうやって私が刺されることも…全部わかっていた」
武「…いえ」
…あら、違うの。トラベラーなんて自分のいる未来がろくでもないものだから過去を変えるために来るものでしょ？私があの子に刺されたのは、この子にとって良かった…ということ？
武「俺の未来では過去にAさんがマイキー君を倒しています。それで東卍は羅賦良簾に飲まれました。ですが、ある日Aさんが東卍の反乱により心臓を刺され死にます。…首領を失った羅賦良簾は解散。簡単に説明したら…こんな感じなんですけど。信じてくれますか？」
個人的な意見としては信じたくない。でも…こんな具体的な話なら信じなければいけないわ。…今回のことで過去は変わった。…元々は私はこの抗争で佐野を倒すはずだった。
ちょっと想像しにくいけれど、確かにあそこで邪魔が入らなければ私はきっと佐野を壊していたと思う。桔梗を失うかもしれないという恐怖と焦りと…怒りによって。
そう考えればあそこで刺されたのは私にとっても正解だったのかもしれない…、おかげでみんなを悲しませてしまったけど。
「貴方はどうしてこの話を私にしようと思ったの？私が他の人に言わないという根拠は？」
武「根拠はないっす。でも…、Aさんを見ていたらなんか言った方が良いんじゃないかと本能がそうやって…」
本能…エヴィデンスの欠片もない言葉。
「まぁいいわ…。貴方の話は一応信用してあげる、殺されるのはごめんだから。あの子たちのためにも…私は死んじゃいけないの。…絶対に。…ゾンビみたい？」
武「は…！？え、いや！全然ゾンビじゃないっすよ！Aさんは綺麗な女性っすから！！」
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作者名：suffron* | 作成日時：2022年9月19日 20時
