三ツ谷 ページ46
白橋SIDE
三ツ谷さんの所に戻ると、彼は既に今日縫う分の生地を全て裁ち終わっていた。
「…作業が早いですね…」
三「まぁこれだけだから。俺は次何をすればいい?」
「私はタキシードの方を仕立てるので、デコルテの部分の刺繍を施してくれますか?」
三「わかった。刺繍の柄は前白橋が描いていたやつでいいんだよな?」
「はい。お願いします。終わったら教えてください」
彼はコクっと頷いて作業に取り掛かった。私もタキシード用の生地を裁たないと。
「……」
私たちは次の客が来るまで黙々と作業をしていた。刺繍の柄の確認としてたまに三ツ谷さんから話しかけてはきたけど、それ以外は全く会話を交わさなかった。
ただいま正午。
「…三ツ谷さん、正午なので一旦お店を閉めますね」
三「あぁ、生地を買いに行くんだったな」
きりの良い所で作業を止め、私はドアプレートを“CLOSE”に変えた。
「はい。お腹空きましたか?」
三「…少し空いた」
「何か簡単に食べられるもの持ってきますね」
…と言っても、何かあったっけな。パン…、おにぎり…、スープ…。
「…おにぎり作るか」
しゃけ…、おかか…、焼きたらこ…、三ツ谷さん嫌いなものないよね。多分。
「どうぞ、足りなかったら違うものも持ってきますが…」
三「大丈夫。ありがとう、白橋」
…三ツ谷さん…こんな風にも笑うのか。…もし、竜胆さんが三ツ谷さんのような職業の人だったら私は…、まだ一緒にいられたんだろうな。…ッ…泣いちゃいそう。…駄目だ、三ツ谷さんいるんだから流石に今は耐えないと。
三「…白橋…?」
「…!もう食べ終わったんですか、早いですね」
私はお皿を下げて水につけた。考え事してるのバレたかな。
三「白橋は食べないのか?」
「お腹空いてないので、食べなくても大丈夫です」
三「三食食べねぇと体弱くなるぞ」
「…心配いりません。自分の体調ぐらい自分で管理できますから」
納得していないような顔だけど、それ以上は何も言ってこなかった。三ツ谷さんはやっぱりどこかお母さんみたい。不良時代は下の人たちの面倒見てそうな感じがする。
「では、行きましょう」
お店のドアの鍵をしっかり閉めて、私たちは生地屋に向かった。その店は私がこのビルの一階を借りて店を開くことを決める理由になったほど、色々な生地が売ってあって便利なんだよね。交通機関も使わなくていいし、徒歩で10分かからずに行ける。
263人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
suffron*(プロフ) - ゆいとこさん» コメントありがとうございます!三ツ谷君が最推しなんで結構序盤絡ませていきたいと思ってるんです!これからも頑張りますね! (2022年11月18日 15時) (レス) id: 8634fbdb13 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいとこ(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!(おめでとう…なのか?)いつも楽しく読ませていただいてます!!三ツ谷くん出てくるんですね!今後の展開がすごく楽しみです♪無理せず更新頑張ってください!! (2022年11月18日 15時) (レス) @page1 id: e4df59fc58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:suffron* | 作成日時:2022年11月17日 23時