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ページ37

白橋SIDE

 しばらくの間無言の状態が続き、その沈黙を破ったのは鶴蝶さんだった。

鶴「…竜胆と別れたことを…後悔していないのか」

 「…後…悔…?」

 後悔…か。…していないはずがない。でも…なんで後悔しているんだろう。大切にしてもらったのに…、捨ててしまったから?相手への罪悪感のせい?…いや、何か腑に落ちない。

鶴「あまりにも…辛そうだ」

 「辛い…?勘違いでは…?」

鶴「勘違いじゃない。顔色も悪いし、前見た時よりも…細くなっている」

 顔色が悪いのは…多分出血のせいで貧血を起こしているせいなんだろうけど、細くなったのかな。毎日自分の姿を見ていると違いに気づけない。

鶴「前はこんなに手首は骨張っていなかった。さっき手当てをした時に見た。腕も、肩回りも…全て…。服で誤魔化しているように見えたが…。どれだけ…食べてない?」

 「食べてますよ、夜だけですけど」

 朝は食べたとしてもスープだけだし、昼は仕事中。夜は残ってるスープとおにぎりと…他に何かおかずを少し。

 でも…、最近は何もお腹に入らない。固形物が喉を通っていかない、無理矢理飲み込もうとすると具合が悪くなってしまう。鶴蝶さんは私の言葉を疑わないから、多分嘘に気づかないだろう。

鶴「本当か?」

 「えぇ」

 私は笑った。出来るだけ自然に見えるように。いつもの営業スマイルじゃない…、幸せだと思えた時の笑顔を作った。

鶴「反社に嘘を吐いたらどうなるかわかっているよな」

 「勿論。でも、私は嘘ついてませんからね。…嘘かどうかなど…見破れないでしょう、貴方は」

 鶴蝶さんは私の頭の上にあった手を離し、私の上半身を起こした。

 「鶴蝶さん?そこ掴まれると痛いです…」

鶴「……」

 何も言わずに私を自分の膝に乗せ、私たちは向かい合う形になった。部屋が暗いからあまり表情が読み取れないけど、一体どんな気持ちで私を膝に乗せたんだろう。

鶴「本当に…細い。風俗店の女でさえもう少し…ぷにぷに…していた気がする」

 ぷにぷに…、可愛い表現。

 「元々太らない体質です…、食べていないわけではありません」

鶴「まだそう言うか…。…そういうのも…イザナと似ているな。どんなに辛くてもそれを無理に隠し通そうとする。相手にバレていると気づいていても、話さない」

 壊れ物を扱うように私の腰にゆっくりと手を回し、そのまま引き寄せた。

 …駄目。…温かいけど、何か違う。

 なんで…満たされないんだろう。

*→←鶴蝶



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suffron*(プロフ) - ゆいとこさん» コメントありがとうございます!三ツ谷君が最推しなんで結構序盤絡ませていきたいと思ってるんです!これからも頑張りますね! (2022年11月18日 15時) (レス) id: 8634fbdb13 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいとこ(プロフ) - 続編移行おめでとうございます!(おめでとう…なのか?)いつも楽しく読ませていただいてます!!三ツ谷くん出てくるんですね!今後の展開がすごく楽しみです♪無理せず更新頑張ってください!! (2022年11月18日 15時) (レス) @page1 id: e4df59fc58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:suffron* | 作成日時:2022年11月17日 23時

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