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…
予約から何まで本当にスマートすぎる…
入口の階段を歩く時、
ヒールで歩く私にペースを合わせてくれて。
椅子を引いて私を座るように促してから
席に着くし。
こんなに紳士的なおみくんを作り上げてきたのはお母さんなのか、会社なのか、女性たちか…
「言っとくけど」
『 ん? 』
背もたれに身体をあずけたおみくんが、少し不満げに口を尖らせた
「女性慣れはしてないし
予約してまで連れてきたのは
… Aが初めてだからね」
テーブルにあるランプが静かに揺れた
そんな言葉、
勘違いしちゃいそうになる
けれど、このお店の変わらない優しい雰囲気が、わたしを落ち着かせてくれた。
お店にいる店員さんは見慣れない人ばかり
3年も来てなかったら
変わるものだよね
「ここ。大事なことがある時だけ、ひとりで来てんだよね」
『 ひとりで?』
「そう。落ち着けるから」
窓から見える、ポツポツとした街の灯りが
お店のランプに似ている。
それにほのかに照らされた横顔があまりにもキレイで、見惚れた。
.
一通り料理を食べ終えて
おみくんが好きだって教えてくれたデザートを待っている時だった。
「 Aさ、ここに来たことあるんじゃない? 」
『 っえ…? 』
ふわりと微笑んだおみくんが
水を口に含んだ
そんなことを言われると思わなくて、言葉に詰まってしまう
「 顔みてたら、なんとなくそうかなって」
『 … 黙っててごめんなさい 』
せっかく連れてきてくれたのに
ガッカリさせたくなくて…
謝んないでよ笑
俺は、同じようなお店が好きなんだって知れて嬉しかったよ?
そんなこと言うなんてズルいなぁ…
何気ない一言一言に浮かれてしまう
「Aは どんな時にここに来てたの?」
『 … わたしは 』
おみくんには、正直に伝えよう
口を開いたその時
「 Aちゃん …? 」
横からの声に
顔を向けた。
デザートを持って
わたし以上に驚いた表情で立っていた人
「『 四ノ宮さん… 』」
微笑むと目尻に寄る皺が、すごく懐かしい
おみくんと声が被って
一緒に顔を見合わせた。
…
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作者名:miu:miku | 作成日時:2020年9月15日 22時