case.2 ページ3
カラン…
ドアベルの音が来客を告げると同時に、「いらっしゃいませー!」という女性の元気な声。
その声に応じる様に『こんにちは』と返せば、お好きなところにどうぞ、と言われたので、隅っこのなるべく目立たないボックス席へとAは腰を下ろした。
メニューに目を向けていれば、目の前にお冷やが置かれ、顔をあげれば金髪で褐色のイケメンが視界に入る。思わず視線を逸らす。
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」
『珈琲とハムサンドで。』
なるべく早く退場してもらおうと、早口で告げた注文。
それに微笑みながら「砂糖とミルクはおつけしますか?」やら「珈琲は食後と食前どちらがよろしいですか?」やら業務的な質問を投げ掛ける目の前の店員に、なるべく目線を合わせないように答えれば、漸く彼は「かしこまりました」と一礼して去っていった。
それに密かに息を吐けば、鞄からPCを開いて起動する。
…そういえばあの男、何処かで。
そんな違和感を感じてから、思い出すまでに然程時間はかからなかった。
思い出したところで関わりなんて持ちたくはないけれど。
ただのイケメンならまだいい。
彼の正体を一方的に知っている彼女からしたら、面倒事に巻き込まれるのだけは御免だった。
今度からこのお店には近寄らない方が無難かとキーボードを打ちつつ思慮を巡らせる。
先程の引ったくりがもう話題になっている。
ネットの拡散力とは恐ろしいものだ。
「お待たせしました。ハムサンドと珈琲です。」
『ああ、どうも。』
運ばれてきたそれにちらりと視線を移し礼を告げた後、珈琲を一口含んだ。
じわりと染み渡る苦味に無意識に息を吐いて、カップソーサーの上にカップを置けば、キーボードを打つ方とは反対の手でハムサンドを頬張った。
『…!!うまっ。』
思わず零れた言葉に頭上から声がした。
「お口に合ったようで良かったです。」
『けほっ、』
にこりと爽やかながらも何処か胡散臭い笑みを浮かべて放たれた言葉に、思わず噎せる。
「大丈夫ですか」と水を勧める彼に一体何時からそこに立っていたのだろうかと、Aは内心静かに頭を抱えるのだった。
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trr - 続編待ってます!!!! (2018年12月10日 5時) (レス) id: 4ac3c5bb30 (このIDを非表示/違反報告)
咲空(プロフ) - 坂竹会長さん» ご指摘ありがとうございました!(´・ω・)っ【ティッシュ】 (2018年10月19日 13時) (レス) id: 1695bf9265 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - 更新頑張ってください。夢主ちゃんの設定がドストライクです。貴方が更新するたびに、僕の鼻からイチゴオレです←汚なッッッッ。 失礼しました。_ーд#_ (2018年10月14日 10時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - ページ26、名前変換なっていませんよ。(名前)と向き合うってなってます。間違っていたらすみません 失礼しました (2018年10月13日 21時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、すごく面白かったです! (2018年9月27日 15時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲空 | 作成日時:2018年5月17日 1時