【安室透】私はブサイク専門【降谷零】

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着物なんて成人式以来なんですけど。

んでもってこんなに気合い入れたのも就職活動以来ですよ。

それに彼氏のお母さんに挨拶に行く時でさえナチュラルメイクなのに鏡に移る自分は別人。

めっちゃ美人。

こりゃモテる。



「Aちゃん可愛い…」

「自分で言うかよ…下で母さん待ってるぞ」

「はいはい、今行きますー」



ふと立ち上がった時にお腹を圧迫する帯に目がいく。

あの時の圧迫感と全然違うな…。

当たり前だけど…！

当たり前だけど思い出してしまう自分が恋してる事を自覚させられて恥ずかしい。









「初めましてAさん、会えて光栄です」

「こちらこそ安達さんに会えて心からお喜び申し上げます」

「そんな固くならなくても大丈夫ですよ！気にしませんし話しやすいので」

「そうですか？しかしせっかくのお見合いなので」



おほほほほ、と笑う私の隣には同じくビシッと決めたお母さん。

向かいの相手の横には同じくバビッとした母親。

うん。体型が既にポメラニアン。

まるっとしてて可愛い。

安室さんならシェパードって感じ？ゴールデンレトリバーかな？

私はなんだろ？

今度安室さんにでも聞いてみようかな。

そんな事を相手の会話に相槌を打ちながら現実逃避を早速かますA。

現実逃避が一番楽で時間の流れが早く感じるからね。

むしろお見合いは嫌だって言ったのにするんだから失礼にならなかったらいいと思う。



「時にAさんのご職業は…」

「きっさて---っう！」

「どうかなさいましか？！」

「いえ、噛んでしまいました、すみません、現在は---」



ギロり、と隣を睨むとお母さんが楽しそうに会話を弾ませていた。

思いっきりつねられた太ももが痛くて殺意が湧いた。

あれ？

お母さんも使えるの？

殺意マジック。



「僕の実家は農園なんです、今度一緒に見に来ませんか？」

「え？農園ですか？」



会えて“一緒”を無視して話題を変える。

早く帰りたいのに。

どうせボロが出るんだから実家の手伝い☆って言わなくて良くない？

どこまで娘を嫁にやりたいんだあんたは。



「あの、お庭に出ませんか？私足が…」

「気が利かなくてすみません！だったら2人で、はダメですか？」

「え…あ、はい、喜んで」



隣からの鋭い視線に耐えられなくて折れる。

私の心も折れたよマミー。









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盗聴器から聞こえてくる声に耳を澄ませ、安室さんはポアロで今日も笑顔を振りまいていた。

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