キス魔の私。【第五人格】

綺麗な薔薇には棘がある ページ8

コンコン

ドアをノックする音が聞こえる。
私は慌ててベットから起き上がる。そうか、疲れて寝ていたのか。まだ目が覚めないので、目をこすっていると「Aさん。入るよ」と、扉の向こうの声の主が私に聞いてきた。きっとジョゼフさんだろう。

『はい』と返事をする。
ガチャ。という音がして扉が開く。

「舞踏会の時間だよ。」

すっかり忘れていた。

『あ！すいません』

慌ててヒールを履く。寝起きのせいか足元が覚束ない。

「大丈夫？」

心配そうにジョゼフさんが聞く。

『すいません。少し手をお借りしてもいいですか？』

「勿論」

ジョゼフさんの掌に手を乗せる。
暖かい。ジョゼフさんは私と目を合わせない為か横を向いている。

私がヒールを履き終わるとジョゼフさんが口を開いた。

「良かったら、舞踏会が行われるホールまでエスコートしようか？」

『お願いします』

笑顔で返事をする。
きっと彼は上流階級出身なのだろう。教養がある。私が今までに従順させられた男達とは違う。こんなに優しいから、女性達に人気なのも納得だ。


「それじゃあ行こうか。」


彼が私に微笑みかける。


『はい。』



長い廊下を歩く。


「Aさん、敬語じゃなくてもいいよ」


頷く。


『ええ。分かったわ』


笑顔で彼に言う。



長い筈の廊下が短く感じる。



パーティーが行われるホール続く階段が見える。
皆と仲良くなれればいいな。

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