甘い蜜 ページ20
グラスが紫に満たされる。
私が見とれていると、彼は「飲んでいいよ」と声をかけてくれた。
『じゃあ、いただくわ』
ワイングラスに口をつける。仄かな甘味と葡萄の酸味を感じる。後味は、すっきりとしていて飲みやすい。
「美味しい?」
『ええ。美味しいわ』
「それは良かった」
彼は喜びながらそう言い、私の隣に座った。彼もワイングラスを手に取り、ワインを飲み始めた。彼の横顔が見える。少し大人っぽいけど、まだ青年のようにも見える。
彼がワインを飲み終わったのを確認し、私は彼の肩に頭を乗せる。彼の体温が私に伝わる。
「Aさんって、ここに来るまでは何してたの?」
彼が私に聞く。
『売られて、買われて、殺された。それで逃げてきた』
彼はその言葉だけでも理解してくれた。
辛かったね。もう大丈夫。そう言って、抱き締めてくれた。嬉しかった。
でも、人を殺したという事だけは言えなかった。言ったら離れてしまうと思って。
「疲れたでしょ。シャワー浴びてきたら?」
『あ、もう浴びてるわ』
実はディナーの前にシャワーを浴びていた。
「じゃあ、こっち来て」
彼がソファーから立ち上がり、ベットの方へ向かう。私も立ち上がり、ベットに向かった。
ベットの前へ行くと、彼が私をベットに優しく押し倒した。彼は馬乗りになり、強引にキスをする。
口の中に甘酸っぱいワインの味が広がる。
唇を離して、彼は私にこう言った「君を買いたい」と。
私は、その言葉には何も返さなかった。
いや、返せなかった。
なぜなら、私を愛してくれている人は彼だけではないからだ。
「一人じゃ不安でしょ?」
彼はそう私に問いかける。
「初めて君に会った時から、ずっと君を手に入れたいと思ってたんだ」
彼はそう言うと、私を姫抱きにしてベットに寝かせてくれた。
寝転がったままだと、話しにくいので上半身だけ起こす。
彼は私の隣に座る。
「どう?悪くないでしょ」
『悪くはないけど』
この場合は何て言えばいいのだろう。
「まあ、返事は今日じゃなくていいよ」
そう言いながら、彼は立ち上がってシャンデリアの電気を消しに行く。
「一緒に寝よう」
彼がベットに寝転がる。そして、私の事を優しく抱き締めた。
私は目を閉じて、そのまま眠ることにした。
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Clay.(プロフ) - さめさん» 実は少し、、、自然と似ちゃうんですよね。やっぱり服とか変えた方が良いんですかね、、、 (2019年12月9日 6時) (レス) id: eccd71672a (このIDを非表示/違反報告)
さめ(プロフ) - 表紙?のやつってもしかしてキルマー参考にしたりしました?(似てたので違ったらすみません) (2019年12月8日 23時) (レス) id: ebdf180e41 (このIDを非表示/違反報告)
Clay.(プロフ) - 暇林檎さん» 閲覧してくださり、ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月7日 19時) (レス) id: eccd71672a (このIDを非表示/違反報告)
暇林檎 - 雰囲気が大人っぽくて凄い面白いです!!頑張ってください! (2019年12月7日 17時) (レス) id: 21d25cd3cb (このIDを非表示/違反報告)
Clay.(プロフ) - yさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月3日 7時) (レス) id: eccd71672a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Clay. | 作成日時:2019年12月1日 16時