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そして、いよいよ高校卒業の日となった
式が終わり、少しずつ人が減っていく
友達と別れの言葉を言って、教室を出る
もうこの廊下を通ることもなくなるんだな…
迷子になって、陸くんと一緒に協力した頃が懐かしい
「A!」
ああ、今日は会いたくなかったのに
『陸くん…』
「あの、これ、Aに受け取ってほしくて…」
頬を赤く染め、小刻みに震えている陸くんの手には、ボタンがあった
「他のボタンは全部取られちゃったんだけど…第2ボタンはなんとか死守できた!」
屈託ない笑顔に、胸がきゅーっと押しつぶされそうになる
『こ、これ、私が貰っていいの?』
「Aのためにとっておいたんだ…。あ!よかったらなんだけど!」
『ありがとう』
そっとボタンを受け取り、握りしめた
『3年間仲良くしてくれてありがとう。アイドルになったら絶対CD買うね!じゃあ、』
なるべく悟られないように、必死に笑顔を作りながら、振り返って去っていく
大丈夫、大丈夫…
「まってA!!」
腕を掴まれ、動けなくなる
「あの、俺、さ」
「Aの、ことっ」
『まって!!ダメだよ…』
「A…」
『お願い……』
「……っ、わかった」
『…バイバイ陸くん。元気でね』
精一杯の笑顔で、その場を立ち去った
これでよかったんだ
陸くんの夢を邪魔したくない
陸は家に帰って、ふと寄せ書きを見て気がついた
『ずっと待ってる』というAの字面を…
「速報です。国民的アイドルグループ、IDOLiSH7が解散することが発表されました」
「では代表して、センターの七瀬さんコメントお願いします」
「7年間、こうやって活動出来て本当に誇らしいです。皆さんありがとうございました」
陰ながら応援して早7年…解散か
まあ、最年長の大和さんも今年で29だし…
頭では納得していたけど、心が追いつかなかった
もっと見てみたかった、IDOLiSH7を…
はぁっと溜息をつきながら、夕焼け空を眺めた
「A」
ずっと呼んで欲しかった声が後ろから聞こえた
そんなはずはない、だって…
『り、陸くん…?』
「当たり!」
メガネをとって、眩しい笑顔を向けた
「ずっと待たせてごめん」
あの頃は触れられなかった、彼の手の温もりが伝わってくる
涙で前が見えない
「好きだよ、A」
抱きしめられると、ふわっと彼の匂いがした
「私も、ずっと陸くんが好き…!」
その日、私はもう一度初恋の絵本を開いた
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作者名:ひな x他1人 | 作成日時:2018年5月1日 0時