恋の欲張りセット【アイナナ】 (ページ3)

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set 2 さようなら、花泥棒さん【七瀬陸】ページ3

『失礼しまーす。おはよう陸』

「A！来てくれたんだ！」

子犬のように喜ぶのは、七瀬陸

私の彼氏だ

元々高校が同じで、卒業の時に告白され、今まで5年間付き合っている

生まれつき病弱な彼は、昔から病院三昧だったらしい

高校の時は、容体が良く、ほぼ毎日学校に来ていた

それから原因は不明だが、容体が悪化し、また病院の生活に戻ってしまった

「どう？新社会人は？仕事忙しい？」

『今は、覚えることが多いかな」

「そうなんだ。あー、俺も一緒に働きたいよ」

『陸は、病気を治す方が先でしょ』

高校の時みたいに、元気な陸が見たい

苦しそうな顔を見るのは嫌だ

「あはは、そうだね。まずはそこからだよね。あ！そうだった！あのね、外出許可とれたよ！」

『ほんとに！？やったね陸！！』

最近は、顔色も良いし、調子も悪くないみたいだからかな

入院してから、数回しか外出できなかったし、陸もそうとうストレスが溜まっているだろう

「でね、Aがよかったらなんだけど。俺、海に行きたいな。実は今までいったことないんだよね」

『もちろんいいよ！海かー、私も子供の時に1回しかいったことないな』

その1回も昔すぎて記憶はあまりないし…

「楽しみだなー！はやく行きたい！」

『楽しみなのはいいけど、体調崩したりしないでね』

「うー、わかってるよ」

1週間後

「海だー！！！」

外出許可が下りた日に、約束通り海に来ることができた

季節は夏で、海水浴をしている人もいる

「いーなー、俺も海に入りたい」

『もー、体冷やすのは厳禁でしょ！』

陸はいきなり靴を脱ぎ、砂浜の海水に足を濡らした

「わっ、結構冷たい。Aもおいでよー！」

冷たいのはダメってさっき言ったばっかりなのに

でもまあ、浸かってるのは足の裏だけだし、いっか

私も靴を脱ぎ、砂浜に足をつけた

ぱっぱっぱっと砂を足に感じながら、陸の元へ走った

陸は私の手をとり、いわゆる恋人繋ぎをした

そしてニコッと、カッコいい笑顔で微笑んだ

『っ…』

私はこういう陸に弱い

いつもは甘ったれた弟のようなのに、ふとしたとき、別人のようにカッコよく見える

そういうとところも、好きだ

手を繋いで、一緒に歩いた

陸が隣にいる、そんな簡単なことだけど、とても幸せだと感じた

この時間をいつまでも閉じ込めておきたい、そう思った

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