恋の欲張りセット【アイナナ】 (ページ2)

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「あー、またダメだった…。あ、天はやらなくていいの？金魚すくい」

『んー、僕はいいかな』

子供のようにはしゃいでいる無邪気な横顔を見ているだけで満足だ

それだけで僕の胸は熱くなり、ドキドキと高鳴る

見てるだけでこんなんじゃ、僕も救われないな…

『ねえAってさ、綿菓子好きだったよね？』

「え？そうだけど…よく知ってたね」

どれだけ僕がAのことを好きだと思ってるんだ

好きな食べ物くらい、全部把握済み

って、なんか僕ストーカーみたい…

『…まぁね。じゃあ、僕が買ってあげるよ』

「ほんと！？ありがとう、天！」

綿菓子を買い、Aに渡す

「綿菓子サイコー！」といいながら、パクパクとAは食べ出した

人混みを見ると、同じクラスの人がいた

うわぁ…最悪

色々言われるのが嫌だから、わざわざ遠い夏祭りに誘ったのに

僕と今後のAのために、僕はAと少し距離を置いた

「まもなく、花火が打ち上げられます」そんな放送が流れた

「花火始まるみたいだね。どこで見る？」

『花火を見る良い穴場があるんだ。そこに行こう』

知り合いに見つかるのも時間の問題

Aと2人きりにもなりたかったし、いい機会だ

近くの神社に着き、2人で石段に座る

運良く辺りは誰もいなく、夏祭りのざわめきが少し聞こえた

「暗いね。なんかドキドキする。てか、花火まだみたいだね。はやく見たいー」

『ああ、そのためにこれ。線香花火買ってきておいたよ』

「さすが天！準備万端だね！」

マッチをつけて、線香花火を灯した

長かった夏祭りも、もうすぐ終わろうとしていた

Aと会えるのも、今日で最後だ

いつものように色々な話をした

困らせることは分かってた、自分勝手で、自己満足でしかないことも

だけど、僕は【好きだ】って言えなかった

線香花火が尽きた頃、打ち上げ花火が始まった

「わぁ、きれいだねー」

夏の夜に浮かび上がる打ち上げ花火

ああ、この時間がずっと続けばいいのに…

こんなふうにAのそばにいられるなら、どんなにいいだろう

今日Aと過ごした時間は、一生の宝物

絶対忘れない、いや、忘れられない

Aも覚えててくれたらいいな

闇に包まれた空に、最後の打ち上げ花火が消えていった