伏黒甚爾は恩人でした

【番外編】 ページ42

恵





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「A、ガキの面倒見とけ。仕事行ってくる」







『はーい』







寮にいるのにも関わらず親父は仕事に出かけるといつもAさんに面倒見るように言ってくる






俺だってもう16だってのに






「あ！Aさん！新しいアイス出たから一緒に食べよーよ！」







勝手に部屋に入ってきた虎杖はどかっと座りAさんにアイスを渡す






「Aさんいちご食べれたの？」







『うん。最近食べれるようになったんだ。覚えてくれてたんだねー』







よすよすと頭を撫でてきて思わず腕を止めた






「伏黒って昔からAさんって呼んでんの？」






決してそんなことはない。子供の頃はAちゃんって呼んでたけど今更ちゃん付けで呼べねぇし恥ずかしい







『思春期だから仕方ないよね〜。別に悠仁も好きなように呼んでいいよ？』






「じゃあAちゃんって呼んでいいすか！？」






『どーぞ』






なんでかはよく分からんがモヤッとした。ちゃん付けで呼ぶのは俺だけだと思ってたのに






「虎杖、お茶買ってこい」





アイスを食べ終えAさんは俺の顔をじーっと見つめてくる。目を逸らしてもそのまま見つけてくるので聞いてみる





『恵のまつ毛ってほんと長いよねー。子供の記憶が強すぎてこんなに大きくなったのが未だに信じらんない。背も私より高くなっちゃってさ』






いつまでも子供扱いするAさんに無性に腹が立った






頭を打たないように支えながら押し倒すとびっくりした顔で俺を見る彼女。あの頃と変わらない綺麗な赤い目はいつだって俺を刺激してきた







「俺が乗ったら動けないですよね。いつまで子供扱いするんですか。俺だってこのままAさんを抱くことくらいできます」






『じゃあ抱く？恵ならいいよ』






この人はずるい。俺の気持ちを知った上で大人な対応をしてくる



俺がこの人を死ぬほど好きになってもこの人には勝てないだろう







「…っ！？」






帰り際、口にキスをしてきたAさん。俺は空気が抜けたようにその場に座り込んだ







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