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それから約数ヶ月が足早に過ぎていった。
音楽室通いも零との関係性も継続しており、少女に向けられた嫌がらせは何故か、あの一件以来ぱたっと無くなった。
数ヶ月経っていても未だに後味が悪く、佐伯という人物からも娘からも何一つ無いという点が、また疑問だった。
どれほどあの曲に時間と労力を割いたというのか、一発お見舞してやらないと気が済まない、と怒りを腹の底に込めている自分がいる反面
過ぎたことを引きずっていても仕方ない、と開き直っている自分もいて…。
そういう複雑な感情がずっとあり、解消したいと思っていた。
少女はこの学園の事ならば何でも知っていると、よく言う零に尋ねてみることにした。
『朔間さん。』
何時もの音楽室で呼び掛けると、零は此方の存在に気付いているにも関わらず返事をしなかった。
その意図を理解していた少女は深い溜息を吐いた後、彼の望む呼び名を仕方なく口にした。
『零
「なんじゃ？嬢ちゃん。」
確信犯である。
さん。』
後に敬称を付け足すと、騙されたと言う様な苦い表情をした零がじとりとこちらを見つめている。
『私だって慣れようと頑張ってるんです。もうちょっと時間をください。…あの、ちょっと聞きたいことがあって。』
「聞きたいことかや？」
『数ヶ月前に、私の曲が燃やされたのあったじゃないですか。…あの後、そのぱったりと嫌がらせが無くなったのがどうも引っかかって…。何か知りませんか？』
そう尋ねると零は首を振って、「知らんなあ」と答えた。少女は内心、絶対何か知っている気がすると思ってはいたが理由もなく疑うのは良くないと、言いたい気持ちを抑えて、その日を終えた。
──後日。
廊下を歩いていると、普段通り噂をする声が耳に入ってきた。
自分の事かと前回の記憶を呼び覚まされるような不安にも駆られたが、気にせず通り過ぎようと歩を早めた時─
「あれでしょ？…音楽科の佐伯さんのお父さんさ、会社潰れたんでしょ？」
「え、音楽プロだったんだよね、なんで潰れたん？」
「あんまよく分かってないらしいけど、噂だと引き抜きしようとしてた、とか赤字とか…パワハラとか？も聞いた事あるよ。」
「どっちにしろ駄目だったって事だけは共通だわ。あ、そうそうそれで思い出したけど佐伯さん、同じクラスの女の子虐めてたらしいよ？」
「マジ？！…ないわー。」
思わず壁に隠れて聞いていたが、どうやらとんでもない事態にまで発展していたようだった。
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作者名：黒凛蝶 | 作成日時：2022年6月14日 16時
