吸血鬼に捧げる歌なんかない (ページ31)

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また翌日。鞄内の私物が消えた。
予想が着いたのは女子トイレだった。
良くない言葉だが、選ばれそうに思ったからだ。

到着するなり、確認していくと一番角の個室の便器の中に私物が無惨にも捨ててあった。

壊され、ペン類もゴミ袋の中に投棄されていたりと散々な荒れようで、先日の出来事で彼女らの引き金を大いに引いてしまったのだと理解した。

素手で取るしか為す術もなく、多少の抵抗はありながら取っていると個室の扉が勢いよく閉まる。

まるで昔読んだ漫画の様に典型的で悪質だった。

扉を押して開けようとするも、向う側で何かが引っかかっているのか、はたまた抑えられているのか分からないが開けれない。

こうなっては仕方が無い。掃除作業員の人が来るまでは授業にも出られないだろう。

放置されて終わるかと思いきや、今度は上から物音がして見上げようとするが

その前にバケツ一杯の水が流れ落ちて来た。

外からはクスクスと笑う声がして、思わずため息を着いた。

悪い予感は全て的中し、扉も開かず閉じ込められ、制服も髪も体もずぶ濡れ、おまけに私物類は便器とゴミ箱の中だ。

『…気持ち悪い…。』

肌に濡れたシャツが張り付く感覚に不快感を覚える。
換気で入ってくる風が偶に吹き抜けて寒さも感じる。

こんなのでは、授業に出て音楽室へ向かうは愚か、廊下に出れやしない。
作業員の人が来なければ最悪この女子トイレで泊まる事にもなるだろう。

本鈴が辺りに鳴り響く。

授業の事などとうに諦めて、私物を拾い便器の蓋を閉めてその上に腰かける。

立っているのは数分だったが、どっと疲れた。

頭の中には反省や後悔、自責の念が渦巻いていく。

自分が零と接していなければ、零に対して変な意識が向けられる事はなかった。

ピアノを弾きたいという衝動など消し去ってしまえばよかった。

零はアイドル、沢山のファンを抱えている。この学院に彼を知らぬ人などいない。何処にファンが居ても不思議な事じゃない。もっと注意していれば良かった。

そもそも曲作りなんて昔で辞めておけば良かった。

優柔不断な所が嫌いだ。自分の全てが嫌いだ。

昔も今もさして変わりないんじゃないか。

もしかすると昔でも良い音でなんか一度も弾けていないんじゃないか。

零の事を理解していないのは、出来ないのは何故か。

なんだか頭が痛い。

『…。』

今日も音楽室には行けそうにない。