吸血鬼に捧げる歌なんかない (ページ17)

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それからまた数週間が過ぎた。音楽室には二三度足を運んだ。何時もの如く零はいた。
しかし必要最低限のやり取り以外は、少女から話すことは無かった。

ピアノも無心で弾いていた。
そうして夕方頃になると片付けをして、寮に戻る。

自分が帰った後零が音楽室で何をしているのかは未だに知らない。

夕方頃、突然一本の電話が来た。
零の所属するUNDEADのメンバー、大神晃牙からだった。

何やら急ぎの用らしく、すぐに来るよう急かされて、
訳もわからず指定されたダンスの練習場へと足を運ぶ。

少女は晃牙とも零がデッドマンズの頃からの知り合いで縁がある。

性格は狼というより、犬と言った方が的確なのだが、晃牙にそれを言うと噛み付かれる様に怒られるから、言わないでいる。

待ち合わせのダンスの練習場に着くや否や、晃牙が背中をぐいぐい押してくる。

その強さから晃牙自身の感情が直接伝わってくるようだった。

主に苛立ち、苛立ち、苛立ちと言った所だろうか。

少女は何となく事態を察していたが、晃牙に改めて聞くことにした。

『…それで、これは一体どういうことですか？』

「どうもこうもねー。見たまんまだろーがよ。」

晃牙は顎先でクイと少女に目線をもう一度向こうに向けるよう促した。

『いえ、見ても分からないので言ったんです…。』

「いや分かんだろ。」

『いや無理です。』

少女の目の前に広がっていた光景は、同メンバーの羽風薫と、乙狩アドニスの二人が棺桶に向かって頻りに何かを訴えかけている現場だった。

何を言わずとも、ある程度この先の展開は読めてはいたのだが実際に目の当たりすると、動けなくなる何かがある。

それに、あの棺桶にいるのは確実に零だ。

最近で更に自分から距離を置いてしまったせいで、話せずにいるのに、零の活力を取り戻せとかいう難題を突きつけられたらたまったものではない。

今の状態で、自分に零を諭すのには無理がある。

「おまえの仕事だろ、あーいうのは。」

『いえ仕事じゃないです。帰ります、失礼しました。』

そう言ってそそくさと帰ろうとする少女の肩を勢いよく掴んで引き戻した。

『ぅわっ…─！？』

「勝手に帰ろうとすんな！マジでアレどうにかしろ。」

『嫌です。私よりも近く接している大神君達の方が適任ですよ。』

「いやおまえの方が長ぇし近ぇだろうがよ。」

『いいえそんな事ないです。』

押し問答を繰り返していると、棺桶の方にいた薫が近寄ってきた。