13 ページ13
・
今日は「キャッ」って言わなかった。
その力に逆らわず、少し低い場所にある胸の中におさまった。
この前は、両手をあげ、無抵抗なのか降参なのか服従なのか、情けない姿をしていた。
今日はもちろん違った。
片手は頭を、片手は体に、ふわっと巻き付いていた。
そして、私の頭に唇をつけ、男っぽい声を出した。
有岡「すげー嬉しい。
もう絶対離さねえかんな」
最後に、髪の毛にキスをされた。
リップ音もしないし、見えないけど、グッと唇が押し付けられたから。
頭に巻き付いてた手が、私の顔の方向を動かした。
有岡の顔を見上げる形で目が合っている。
・
有岡「キス……してもいい?」
何度もしてきた。
だけど、初めて聞かれた気がする。
ぶつかったみたいなキスをしてた小学生時代。
そんな事ばっかり考えてたであろう中学時代。
当然のように奪われた高校時代。
ずっと誰かのものだった大学時代。
A「……うん」
そんなに広くない部屋でも、有岡にしか聞こえないくらいの小さな声で返事をした。
有岡のちょっと冷たい細い指が、私のほっぺを包んだ後、そのまま滑らせ顔周りの髪の毛をすくいあげて止まり、顔の角度をつけられた。
そして顔がゆっくり近づいてきたので、そっと目を閉じた。
顔に体温を感じてすぐ、柔らかい唇が触れた。
柔らかい唇は、あの頃と変わらない。
変わった事といえば、その唇が優しかった事。
優しく唇を押し付ける、ソフトなキス。
数秒くっついた後、ゆっくり離れた。
5cm、10cm、20cm……
目を合わせたあと「ふっ」って笑われた。
照れ隠しと、もう一つの理由。
有岡「大人の味がした」
A「えっ」
有岡「ビール」
A「ビール?」
A「え、そんな味しないでしょ?」
有岡の胸にトンッて寄りかかった。
目の前ある赤い口からは、アルコールの香りがするのか分からない。
自分も飲んでるから。
有岡「大人の味がしたのに、ファーストキスみたいだった」
A「え……」
小二のバレンタインの時に、有岡に奪われたファーストキス。
A「あの時は、チューリップサブレの味だった」
有岡「覚えてるんだ」
A「半分唇じゃないとこにされて。
チューリップサブレがほっぺについちゃってて、お母さんに言われたの」
・
1238人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:やまぱん | 作成日時:2019年6月20日 23時