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正面に立ち、一歩近づいた。


傷のある左のほっぺを、有岡の手が包み込んだ。


そして許可をしてないのに、傷を隠してるガーゼのテープをはがし始めた。





有岡「あっ」






A「少しだよ、ほんと少し切れただけ」





傷の辺りをじっと見て、動かなくなってしまった。





A「もう、終わり・・・」


ガーゼを戻そうとしたら手首をつかまれ、有岡の顔が近づいた。









えっ・・・





傷の側に、有岡の唇が触れた。






有岡「ごめん・・・守りたいって思って。

  自分が傷つけたのに、変だよな」






腕をつかまれたまま、ぐっと抱き寄せられた。

テレビのドラマで見た、ドキドキする場面と一緒。




違うのは、私たちは子供で恋人同士ではないって事。






耳と耳が触れ、有岡の肩に私のガーゼと唇がくっついた。






有岡「あのさ・・・」






有岡の声が、耳からだけじゃなくて体からも伝わってきた。






有岡「俺、ホントはただの幼馴染だなんて思ってねえから。


  Aだけには、ちゃんと伝えたくて。

  俺の好きな人だから・・」







有岡はどんな顔をしてるんだろ。


さっき幼馴染だと宣言されて寂しかったのに、今は素直に喜べなかった。






A「うん・・・」






有岡「なあ、伊野尾が言ってたみたいに、俺を守ってくれたの?」





それは有岡には質問されたくないやつで。

本当の気持ちは言えないけど





A「体が、勝手に・・・」





有岡「そっか・・・


  もう、こんな事にならないようにするから。


  ごめんね。


  あっ、そうだ・・・」






今度は体を急に離されて、腕も解放された。


そして、自分のズボンのポッケから何かを出した。






有岡「お小遣いが全然なくて、こんなのしか買えなかったけど。

  10/15、A誕生日だったじゃん。

  一週間も遅れちゃったけど、プレゼント。

  すげー昔、よく遊んだやつで、A、この匂いが好きだって言ってた」







ミヨシで売ってる、短いストローで吹いて作る風船だった。

「風船玉」とか、「ビニール風船」とかいってたやつ











A「あっ・・・

  久しぶりかも・・・ありがと」






有岡「口痛くて、吹けないよね。

  ごめん、そこまで考えてなかった」





A「ううん、覚えてくれてたのは嬉しい」






有岡「うん・・・」







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作者名:やまぱん | 作成日時:2018年8月29日 23時

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