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ダイキの顔の表情が見えないけど、ひどくなる気配はなかった。

でも、ゼイゼイと苦しそうな息をしている。


やっと東京駅に着き、大切な黒いバッグと、手土産のお菓子と、ダイキの荷物を片手に持って、もう片方の手でダイキを抱えた。



人の波と一緒に、電車から降りると、スーッと冷たい風が吹き、ダイキがコンコンッと二回咳をした時に、呼ばれた・・・一秒でも早く会いたかった人に・・・





大貴「ダイキ、A!」




A「大ちゃん!」




人混みをかき分けて、私達に近寄り、すぐに私の手からダイキを奪った。





大貴「マスク、ある?」





A「ない・・・・」





母親失格・・・





大貴「ここから出して。

  多分、大丈夫だと思うけど・・」






ドラッグストアの袋に、小さなマスクが入ってた。


小さなって「はじめてのマスク」と書かれた一歳半から使えるやつで、うちには同じやつを置いている。

市販の「子供用」では大きいのを、ちゃんと知ってるとこ・・・だよね。






ダイキは小さなマスクをつけ、「行くぞ!」と言われた方に着いて行った。



大ちゃんの背中を追う・・・・


縦抱きをされたダイキは、大ちゃんの肩越しに私の事を見ている。


とても心配そうな顔で・・・






そして、大ちゃんの足元を見て、ハッとした。


革靴をはいていたから。


視線を上に動かすと、上着は着てなかったけど、スーツ姿だった。


当たり前だけど、これから大切な事をしに行くわけで。


その重大さを改めて感じた。




そして、次の瞬間も、ダメな母親だと思わされた。





大ちゃんの手が、ダイキの首元の蝶ネクタイを取っていて、シャツの一番上のボタンを外していた。




息をするのに、邪魔な物・・・


はーーーっ



ダメだ、私・・・











大貴「ここっ、ちょっとここで・・・」





きっと、ホームに来るまでに見てきたんだろう。

ベンチがいっぱいある、休憩所。





そこに、ダイキだけ座らせて、私に「薬!」と手を出した。




クルッと私の方を振り返り





大貴「これ、ダイキ吸えるの?」





ちょっと怖い顔で、私を睨んだ。





A「とりあえず、何回かやった事あるけど、吸うと少し落ち着く。

  ちゃんと吸えてるのかは、わからない・・・」





吸入剤は、粉を吸うんだけど。


きっと、この前、ケーキのロウソクを消すのがやっとだったから、そう思ったんだよね。





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作者名:やまぱん | 作成日時:2017年11月5日 12時

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